社説

社説[2019参院選 年金不安]切実な声を受け止めよ

2019年7月7日 09:00

 「老後の安心」をどう描くのか。

 金融庁の審議会の老後報告書に端を発した年金を巡る議論が、参院選の争点として急浮上している。

 公示日の第一声で、野党党首の多くが年金問題を取り上げ、暮らしを重視する姿勢を打ち出すなど、論戦が始まっている。

 公的年金は老後の生活設計の柱である。しかし「老後に夫婦で2千万円の蓄えが必要」とした審議会の指摘は、年金だけでは満足できる生活を送れない恐れがあることを政府自ら認めるもので、制度への不安を広げた。

 本紙などが選挙情勢と合わせて行った電話調査では、報告書の受け取りを拒否した安倍政権の対応について「納得できない」と答えた人が76%に上った。「納得できる」は11%にとどまっている。

 いったん公になった報告書をなかったこととし、問題に向き合おうとしない政府の対応に不信感が広がっているのだ。

 昨夏発表された内閣府の「国民生活に関する世論調査」によると、日常生活の悩みや不安で最も多かったのが「老後の生活設計」だった。政府への要望では「医療・年金など社会保障整備」が最多となった。

 10月には消費税増税が控えている。

 「2千万円貯金できる人がどれだけいるのか」「この先、病気や介護のことを思うと不安で仕方がない」といった声は極めて切実だ。

    ■    ■

 日本の年金制度は半世紀前は現役世代9人で高齢者1人を支える「胴上げ」型だった。それが3人弱の「騎馬戦」に減り、今の若者が高齢者になる頃には支え手1人の「肩車」になると予想される。

 自民党は参院選公約に「人生100年型の年金」を盛り込んでいる。制度の支え手を増やし安定性を高めようとの内容だが、少子高齢化の進行で将来的な給付水準低下は避けられそうにない。

 他方、野党の立憲民主党は、所得に応じて医療・介護・保育などに関する世帯の自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入を主張する。

 共産党は年金額の上昇幅を物価や賃金の伸びよりも低く抑える「マクロ経済スライド」を廃止し「減らない年金」を唱える。

 野党側の政策に実現性はあるのか。財源の裏打ちを含め、有権者に判断材料を示す必要がある。

    ■    ■

 問題となった2千万円不足は、公的年金を中心とする収入が月21万円あると想定した平均値である。

 沖縄の高齢者の実態はというと、厚生年金で約12万5千円、国民年金は約5万2千円。加えて無年金状態の人が約1万8千人もいる。米軍統治下で年金制度への加入が遅れた影響を今も引きずっているのだ。

 厳しい生活を送る人たちの現実を踏まえた支援策と、社会保障制度の持続性を維持する未来図を競い合ってもらいたい。

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