18歳以下で妊娠・出産を経験する少女を支えようと、若年妊産婦に特化した居場所づくりが沖縄市で始まって1年がたった。行政主導による若年妊産婦の居場所づくりは全国初。不安定な生活や、学校に通う同世代との違いから精神的な不安が強くなり一般的に児童虐待の危険性が高まるとされる若年出産。赤ちゃんだけでなく、母親自身も成長過程のさなかにいる母子を孤立させない取り組みを取材した。(社会部・篠原知恵)

インスタ映えを狙い作った韓国料理チーズタッカルビを楽しむ少女ら。「もっと早く居場所に来ていれば」と漏らす少女もいた=5月、沖縄市の県助産師会母子未来センター(提供)

「ここでは何してもOK。全部受け入れる」と話す山内れい子さん(中央)らスタッフ。赤ちゃんの成長を記録する「寝相アート」は人気だ=5月、沖縄市の県助産師会母子未来センター

若年出産件数と割合

インスタ映えを狙い作った韓国料理チーズタッカルビを楽しむ少女ら。「もっと早く居場所に来ていれば」と漏らす少女もいた=5月、沖縄市の県助産師会母子未来センター(提供) 「ここでは何してもOK。全部受け入れる」と話す山内れい子さん(中央)らスタッフ。赤ちゃんの成長を記録する「寝相アート」は人気だ=5月、沖縄市の県助産師会母子未来センター 若年出産件数と割合

■インスタ映えを呼び水に

 沖縄県助産師会「母子未来センター」にある居場所は、母親に昼食を提供したり、赤ちゃんに離乳食を提供したりしながら妊娠や出産・育児の相談にのる。

 「若年出産の母親たちは『食事をしに来て』と呼んでも、元々昼食をとる習慣がなかったり、食そのものに興味がなかったりで来ないことが多い。でも『インスタ映え』を呼び水に声を掛けると来てくれる」と話すのはスタッフで助産師の山内れい子さん(61)。

 手にしたスマートフォン画面に並ぶのは、韓国の鉄鍋料理チーズタッカルビやチーズハットクなど色鮮やかなメニューの数々。居場所を訪れた少女らと一緒に作った昼食は都度、利用者全員とのライン(LINE)グループに投稿する。

 山内さんは「しつこいけど」とはにかみつつ、居場所へ来るように少女たちに呼び掛ける「お誘いライン」を毎日送る。少女らは運転免許を持てないため、スタッフは車で母子を迎えにも行く。「子どもがこんなの飲み込んじゃったけど大丈夫?」など、ラインで夜間に頻繁に届く子育て相談にものる。

■夕食しか食べる習慣なく

 居場所を利用する少女の多くは「妊娠が分かった時に戸惑ったと思う」と山内さん。「でも『決意した』ってみんな言うんです。10代なのに、全てにおいて子どものためにがんばっている。その決意を受け止めて支えていきたい」と話す。

 若年妊産婦の居場所を利用する少女たちの多くが当初、夕食しか食べる習慣がなく、食への関心も薄かった。開所当初は1日1食しか食べられない子が目立ったが、1年がたって最近は夜も含めて1日2食を完食できるようになってきた。「初めて昼ごはんを食べた」と言う少女、親が仕事を掛け持ちして朝起きられず、学校に遅刻しがちだったため不登校になった少女もいる。

 助産師の山内さんは「居場所に『来て』ではなく、どうしたら来てもらえるかの仕組みづくりを考えている」と話す。

 同世代が、大人になる過程で家庭や学校で経験することを体験しないまま母になる少女も多い。居場所が企画するイベントで少女たちの参加率が高かったのは赤ちゃんの健康と長寿を祈る「初ムーチー」作りや、よだれかけづくりだ。季節の飾り付けと赤ちゃんを一緒に撮影できる「寝相アート」も人気イベントの一つ。居場所が母子の関係づくりの一翼を担っている。

■妊娠を理由に退学

 居場所を利用する少女は定時制や通信制高校に通う子が過半数を占め、妊娠を理由に普通高校を退学せざるを得なかったケースもある。中卒もおり、仕事はアルバイトか求職中、もしくは無職。将来の経済的自立に向けた学び直しや復学は課題だ。

 「漢字の読み書きが苦手な少女もいて、行政手続き時はスタッフが市役所に同行する」。少女と行政機関の橋渡し役を担う沖縄市の居場所づくり支援員、宮城美幸さんはこう話す。

 「『子どもの保育園を休ませる時はどうしたらいいか』という相談もある」(宮城さん)。保育所など外の世界とのつながり方を知らないことも多い。行政の子育て支援の場に行きづらかったり、存在さえ伝わっていなかったりすることもあるという。

■共感しあえる居場所に

 そんな少女たちが、居場所を通して同世代の子育て仲間とのつながりをつくりつつある。

 父親の男性が18歳を迎えて結婚でき、「預金通帳の名義変更をしたい」と居場所で話した少女がいた。バッグから取り出したのは赤ちゃん名義の通帳。生まれた時に赤ちゃんの誕生日にちなんだ金額を入金し、次に体重分、そして身長分―。「毎月15日に入金したい」とはにかむ少女を見て、他の少女も子ども名義の貯金を始めた。

 互いに家計や出産、パートナーとの関係を助言しあうようになった少女たち。宮城さんは「こうなれば私たち大人が教えることはほとんどない。逆にスタッフが話しすぎないように気をつけるほど」と笑う。

 山内さんは「親や学校に否定され続けて育った少女も少なくない。『大丈夫。誰にだって失敗はあるんだから』と、頑張りを受け止めて、共感しあえる居場所でありたい」と話した。