沖縄では例年、慰霊の日前後に梅雨が明け夏本番を迎えるが、今年は少し様子が違う。梅雨明けが平年より6日遅れたかと思えば、週末は前線の南下に伴う「戻り梅雨」でぐずついた

▼気象予測技術が発達した現在でも天候の変化に戸惑うのに、気象や地形、海流データを持たない約3万年前の人々はどうやって海を渡ったのだろうか。壮大な謎を解くための実験に国立科学博物館の海部陽介・人類史研究グループ長らが挑んでいる

▼約20万年前にアフリカで生まれ世界各地へと移動した現生人類。実験では、日本列島に到着したとされる3ルートのうち最難関の台湾から琉球諸島への航海を再現する

▼これまでに試した草の舟や竹のいかだはいずれも失敗。流れの速い黒潮が立ちはだかった。今回は長さ約7・5メートル、幅約70センチの丸木舟に託し、与那国島に向け7日に台湾を出発した

▼海部さんは著書「日本人はどこから来たのか?」(文春文庫)で、祖先たちがどれほどの困難を乗り越えて渡海したのか体感することの意義を説く。実験を通し、舟が原始的で単純であるほど操る「人の力」が問われるとの思いを強くした

▼確かに、不安定な舟で夜通しこぎ続けるには、体力も精神力も自然の兆候を読む術(すべ)も必要だ。チームワークも欠かせない。太古の人々が持っていた力にロマンを感じる。(大門雅子)