男性にはないルールを女性にだけ強いるのは、やはりおかしい。目の前の当たり前に潜む性差別に一石を投じる運動だ。

 職場でのパンプスやハイヒールの強制に異議を唱える「#KuToo(ハッシュタグ クトゥー)」と呼ばれる活動が共感を呼んでいる。

 ネーミングは性暴力を告発する「#MeToo」と、「靴・苦痛」を掛け合わせたもので、強制反対の動きはインターネットを通して瞬く間に広まった。

 グラビア女優でライターの石川優実さんの、次のような体験から始まった活動だ。

 葬儀場のアルバイトで、「5~7センチの黒のパンプス」を履くよう指定された。立ち仕事が続き足の小指から出血してひどく痛んだ。ある時、男性社員の靴をそろえていると、軽さに驚いた。「働きやすそう。うらやましい」。

 8日現在、署名サイトに寄せられた賛同は3万人を超える。

 経験のない人はピンとこないかもしれないが、ヒールによるつま先の痛みやかかとの靴擦れは、時に我慢できないほどである。機動力や安定性も高いとはいえず、人によっては外反母趾(ぼし)など健康被害を引き起こす。

 問題は、接客業を中心に「女性のマナー」として、パンプスやヒールのある靴を履くことをルール化している企業があることだ。

 解禁となった大学生の就職活動でもリクルートスーツにパンプスが標準とされ、何件もの企業を回る女子大生からは「苦痛」の声がもれる。

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 もちろん好みの靴を履く自由はある。ただパンプス強制の背景には、女性はこうあるべきというジェンダーのとらわれが垣間見える。

 石川さんは先月、厚生労働省に署名と要望書を提出し、「企業が着用を女性のみに命じることは性差別、もしくはジェンダーハラスメントに当たり、禁止する法規定をつくってほしい」と訴えた。

 個人のこととして潜在化していた問題を、性差別の問題として浮き上がらせたのだ。

 パンプス強制について、根本匠厚労相は国会で「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲かと思う」と述べている。運動に否定的な見解と受け取れる。

 英国ではハイヒールを履かなかったために解雇された女性の訴えをきっかけに、政府が職場の服装規定について通達を出した。カナダの一部の州では職場でのハイヒール強制を禁ずる動きがあるという。

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 日本の女性たちが直面する課題に対応できない現実と、政治分野への女性進出の遅れは無関係ではない。意思決定に多様な声が反映されていないからだ。

 今回の参院選の女性候補者は104人で、全体に占める割合は28・1%。男女均等にはほど遠いが、過去最高の数字である。

 女性の社会進出が進む中、職場でのパンプス強制は時代に合わない。

 選挙戦では誰もが働きやすい環境についても声を響かせてほしい。