作家の村上春樹さんに「苦情の手紙の書き方」というエッセイがある。大切な友人をもてなそうと高級フランス料理店に足を運んだが、店員のマナーに失望して手紙を書いた。相手に真意を伝えるこつを「7分褒めて、3分けなすこと」と指南している

▼悪質なクレームや理不尽な要求に、店員が苦しむ「カスタマーハラスメント」が増えている。客から土下座の強要もあるようだ。店員を人間扱いしない、殺伐とした風潮を感じる

▼先日、那覇市内のスーパーで購入した和牛の味がおかしいと感じ、店に問い合わせてみた。「ラベルを回収に行きます」と自宅に駆けつけ、翌日に電話で丁寧に説明してくれた。対応に感動し、マネジャー(59)を訪ねた

▼この店にもカスハラがあった。自販機に千円札を入れたのに釣りが出ないと怒られ、開けるとお札は一枚もない。ひげそりの切れ味が悪いから交換しろと怒鳴られ、家を訪ねると扱ったことがない商品だった

▼マネジャーは「理不尽な主張に無条件で従うと客が味をしめ、クレーマーを育ててしまう」。顧客への誠意と、毅然(きぜん)とした対応のバランスを心がけているという

▼村上さんは2時間かけて手紙を書き、投函(とうかん)しなかった。「書いてるうちに不満が解消された」そうだ。相手を追い詰めない秘訣(ひけつ)は「7分褒める」心のゆとりだろうか。(吉田央)