その日は、朝から大雨だった。1974年5月15日、東京都江東区の豊洲。コンビニエンスストアのセブン-イレブン国内1号店が産声を上げた

▼開店前の朝6時半すぎ、最初の客が訪れる。運転手風の中年男性。店内を一回りした後、レジ近くにあった800円のサングラスを買い、去って行った。「ほんの数分が、緊張する私には何時間にも感じられた」。店主の山本憲司さんは著書に記す

▼19歳で家業の酒屋を継いだ山本さんは将来に展望が持てず商売替えを決意。「発展可能性のあるコンビニに賭けてみたい」。思いの丈をつづった手紙をイチかバチかで親会社のイトーヨーカ堂に送り、晴れて1号店に選ばれた

▼工場や団地だけの殺風景な埋め立て地で始まった店は、今や1日200万円を売り上げる有数の繁盛店に。「商いの成否は発注にあり」と山本さんは説く。立地によって売れ筋の商品は変わる。行けば必ず買いたい物がある。客にそう思わせることが鉄則だという

▼沖縄初出店のセブン-イレブンがにぎわった11日、豊洲の1号店に行ってみた。外観も店内もいたって普通だが、欠品が見当たらない品ぞろえと丁寧な接客はさすが

▼地域に根を張る存在になるべく努力する-。山本さんのシンプルな教えは、コンビニ業界の雄が沖縄で目指すべき針路を示している。(西江昭吾)