社説

社説[参院選2019 沖縄振興総点検]具体策提示し議論せよ

2019年7月12日 07:22

 県は沖縄21世紀ビジョン基本計画(第5次沖縄振興計画)の総点検報告書素案を決定した。第5次計画が2021年度に終了するのを前に50年近くにわたる沖縄振興の成果と課題を分析し、次の振興予算獲得の根拠にしたい考えだ。

 県内の景況感は19年6月期に29期連続プラス、名目県内総生産も直近3年連続のプラス成長となった。好調な経済を受けて就労も完全失業率が復帰後の最低値を更新し、就業者数が初の70万人台を突破するなど経済環境は著しく改善している。

 一方、1人当たりの県民所得は依然として全国最下位で、子どもの貧困率は全国平均を上回るなど、経済の活況が個人へ浸透しているとはまだ言えない。小学生の学力は全国平均に届いたが、中学生はまだ。大学進学率も低い。

 総点検を受け玉城デニー知事は「自立型経済は道半ば」と総括した。言葉の裏には、玉城県政が目指す「誰一人取り残さない社会」の実現に至っていないとの認識がうかがえる。

 47年の振興計画を経ても変わらぬ課題の背景には、沖縄振興の立法化の根拠となった「特殊事情」の一つ、基地問題の影響が見える。

 在日米軍専用施設の70%を占める広大な米軍基地により、県内は経済活動の基本となる土地や航空路の大幅な制限を受け続けている。「爆音」と呼ぶしかない米軍機による騒音で授業は度々中断されるし、基地返還跡地の利活用には長い年月を要する。たとえ返還されても残る基地に分断され街づくりに大きな支障をきたしている。

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 米軍統治下で極端に遅れたインフラ整備を柱にした当初の沖縄振興は、その後、アジア諸国に近いという沖縄の地理的利点を生かした経済的発展を促す目的へと方向転換した。

 しかしなお問題は多い。21世紀ビジョン基本計画が基軸とする考えは「沖縄らしい優しい社会の構築」だが、福祉や子どもに関する予算は獲得しにくい仕組みになっている。硬直化した補助制度の在り方が、特定の産業で補助金頼みの体質をつくっているとの批判もある。

 振興と基地とのリンク論も幾度となく繰り返されてきた。振興策が基地を維持するための装置として使われれば、いくら策を講じても振興が達成されないのは当然である。

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 復帰50年のポスト振計の在り方は、沖縄の未来につながる最大の課題だ。

 参院選沖縄選挙区は、自民公認でシンバホールディングス前会長の安里繁信氏(49)=公明・維新推薦=と、無所属で「オール沖縄」勢力が推す琉球大学名誉教授で憲法学者の高良鉄美氏(65)の事実上の一騎打ち。次期振計について安里氏は「観光を基軸とした経済戦略を描きつつ国土強靱(きょうじん)化を推進する」と訴える。高良氏は「地元企業に恩恵が行き渡る施策を実施する」と主張する。

 それぞれ具体策を提示し活発な論戦を期待したい。

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