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[読書]山本章子著「日米地位協定」 誤解の政治史ひもとく

2019年7月14日 09:58

 なぜ日本は、不平等な取り決めとされる地位協定を受け入れているのか。

中公新書・907円

 「日米」地位協定の呼称が、誤解を誘う一因だ。地位協定は、日米安保条約第6条に基づいて日本が米軍に施設・区域(基地や訓練区域)を供与することから生まれた。「平和状態」の日本で、基地や訓練区域を使用する米軍の権利を定め、米軍の構成員の例外的な取り扱いを定める。対象が米軍である以上、「在日米軍」地位協定がより適切だ。

 つぎの誤解が、安保条約と切り離した地位協定の捉え方だ。安保条約第6条で、米軍は日本の安全に寄与し、極東の平和と安定のために基地を使用できるとされる。条文通りには日本の安全のための米軍基地なのに、現実は基地の周辺に住む人々の安全や暮らしを脅かす矛盾を生み出し続ける。

 さらなる誤解が、地位協定が本土並みに沖縄にも適用されるとの捉え方だ。確かに、日本にいる米軍の地位協定は、返還後の沖縄へ適用された。しかし、在日米軍の集中する沖縄基地から、日本周辺以外の米国の戦争へと展開する「戦時状態」の現実がある。沖縄は世界展開する米軍の一大拠点なのだ。沖縄の負担の大きさを物語る。

 本書は、こうした地位協定下の日本と沖縄を、政治史として、わかりやすく描く。入門書の記述に、専門家の顔がのぞく。地位協定史として、第1章で1951年の交渉開始までさかのぼる。第2章で安保改定、第3章でベトナム戦争。第4章と第5章で、返還後の沖縄。第6章でNATO軍地位協定。第7章で90年半ば以降の基地問題。

 著者は地位協定改定への策を語る。地位協定関連の全ての日米合意の廃棄を提案する。この着眼はいい。これらの合意には、米軍の権利が記され、米軍の権利を制限する日本の原則や権利はない。日本は、抽象的な表現でつづられた地位協定で面目を保つ。だが、合意の下での運用のため、米軍の特権は維持されてきた。

 著者の主張する日米同盟の盤石のための地位協定改定には、さらなる跳躍的論理が不可欠だ。同盟の「相対化」抜きの改定だと、沖縄の基地負担はむしろ増大するだろう。(我部政明・琉球大島嶼地域科学研究所教授)

【やまもと・あきこ】1979年北海道生まれ。琉球大学専任講師。専攻は国際政治史。著書に「米国と日米安保条約改定 沖縄・基地・同盟」など。共著に「沖縄と海兵隊 駐留の歴史的展開」など

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