社説

社説[ハンセン病首相談話]反省を救済につなげよ

2019年7月14日 08:30

 政府は、ハンセン病元患者家族の差別被害を認め、国に損害賠償を命じた熊本地裁判決を受け入れ、「政府として深く反省し、心からおわび申し上げる」とする安倍晋三首相談話を発表した。

 談話では「(元患者の家族への)極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実」との認識を示している。安倍首相の謝罪は当然である。国が訴訟で争っていたことを勘案すると、むしろ遅すぎるくらいである。家族への謝罪は初めてで、近く原告らと面会し、直接謝罪するという。差別被害の苛烈さに向き合ってほしい。

 談話で「訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずることとし、検討を早急に開始する」と表明した。

 原告・弁護団は「被害を補うに足りる賠償が行われるための道筋が示された」と評価。請求が棄却された沖縄の9人を含む原告20人も控訴せず訴訟を終結させた。談話から被害者の線引きをしないと受け止めたからだ。

 家族の完全補償に向けたスタートラインである。談話は「家族の声に耳を傾けながら、寄り添った支援を進め、問題解決に全力で取り組んでいく」と言っている。

 元患者本人への賠償を命じた2001年の熊本地裁判決を受けた小泉純一郎首相談話と比較すると、「反省とおわび」の文言は同じだが、小泉談話が解決の道筋を箇条書きで示したのに対し、安倍談話は明示を避け、具体性に欠けると言わざるを得ない。

    ■    ■

 今後は救済策が焦点になる。家族らと厚生労働省との協議で補償の枠組みや金額、対象となる家族の範囲などを詰めることになろう。

 政府は、元患者の家族を援護できると定めた09年施行のハンセン病問題基本法や、01年に成立施行した補償金支給法の改正、新たな立法措置を検討するとみられる。

 差別と偏見は残る。名乗り出ることができない家族をどう救済するのかも課題だ。判決は1人当たり33万~143万円の支払いを命じたが、「人生被害」を受けたにしてはあまりに低すぎる。

 気になるのは、首相談話と同時に発表された政府声明である。らい予防法廃止後の国の責任、国会の立法不作為、時効判断-について判決に異議を唱えているからだ。家族らとの協議がスムーズにいくかの懸念材料である。政府は談話にのっとって家族救済を最優先に取り組むべきだ。

    ■    ■

 判決は米軍統治下にあった沖縄での被害を認定せず、復帰以降に限定した。

 だが、ハンセン病患者の隔離政策は米軍統治下でも基本的に継続されている。本土と同じように救済措置が取られるべきだ。

 沖縄の原告は250人で約4割を占める。01年の元患者本人の判決後に議員立法の補償金支給法で沖縄に関しても同一基準が適用された。原告・弁護団は「最重要課題」と位置付け、本土と一律の補償を求める。今回も超党派の国会議員懇談会と連携を強め、米軍統治下における被害救済を実現しなければならない。

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