2018年春、吉本興業の専門学校が那覇市に開校した。「夢は声優です。学べることは全て吸収したい」。20歳の1期生が期待に胸を膨らませていた。数日後、県内の経営者と飲食店に行くと、別の1期生が笑顔で接客していた。「ダンスの腕を磨きたくて、県外から来ました。生活費はここのバイトで稼ぎます」

▼若者の夢を応援する理念と、会社の実態がかけ離れていないだろうか。岡本昭彦社長の記者会見を見て、学生たちを思いだした

▼会見前、所属芸人が社長から「録音してないだろうな」「会見したらクビにする」とすごまれたと明らかにしていた。社長は事実と認めた。「冗談のつもりだった」「身内の感覚だった」

▼録音を確かめるのは、言動のやましさの自覚か。トップが「クビ」をちらつかせたら、部下がどれほど恐怖を感じるか。芸人から「守ってくれると思えない」「この社長の下で舞台に立ってたのか…」と失望感が噴出している

▼若手のギャラが300円の場合があるとも明かした。興業で会社が得る収入と芸人への配分比率も、本人に開示してはどうだろう

▼吉本は沖縄で国際映画祭を11年、続けている。大崎洋会長はかつて「3億円の赤字だが、沖縄の若者のため続ける」と語っていた。高邁(こうまい)な理想の土台に芸人たちの犠牲があるなら、やるせない。(吉田央)