所属する芸人の人権や生活を大事に考えない企業なのではないか。

 「闇営業」問題を巡る「吉本興業」の対応は、日本を代表するエンターテインメント企業の本質を、そう勘繰りたくなるものだった。

 闇営業問題とは、吉本所属の芸人らが反社会的勢力の会合に、会社を通さず出席し、謝礼を受け取っていたもの。吉本は、振り込め詐欺グループ主催のパーティーに出席した人気お笑い芸人の宮迫博之さん(49)、田村亮さん(47)らを謹慎処分とし、後に宮迫さんとの契約を解消した。

 宮迫さん、田村さんは反社会的勢力から報酬を受け取っていた上、それを否定するうそをついており、そのこと自体は非難されて当然だ。

 私たちを驚かせたのは、2人が自ら会見を開いて謝罪したいと申し出たにもかかわらず、岡本昭彦社長(52)が「(会見したら)全員クビにするからな」と止めていたことだ。

 さらに吉本側から、契約解消か引退会見するかの選択を迫られ、会見する場合は会社が用意した問答集を練習するよう指示されたという。

 2人が独自に開いた会見で明らかにした。

 2日後の会見で岡本社長は「クビ発言」の事実を認めた。謝罪会見を止めた理由を「(お金を)もらっていたと聞き、パニックになった」と釈明したが、隠蔽(いんぺい)の意図はなかったのだろうか。

 権力の座にある企業のトップが、芸人が自らの言葉で謝罪する機会を「圧力」で奪おうとしたことは、パワーハラスメントと言っていい。

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 闇営業の背景には、吉本興業の報酬や契約の在り方の問題もある。

 通常、芸能事務所は所属タレントと契約書を交わすが、吉本では契約書を交わしていない。口頭による契約で、それさえも、「私は口頭でも(契約内容を)聞いた覚えはない」とお笑い芸人の近藤春菜さんが言っている。

 吉本にはおよそ6千人の所属芸人・タレントがいるが、事務所を通した仕事だけで生活できるのは1割足らずだとされる。

 事務所を通した仕事でも、報酬がわずかしか支払われないことは、テレビなどで所属芸人がよく口にすることだ。

 岡本社長は「(報酬は)会社が9でタレントが1とかそういうことは全くなく、ざっくりとした平均値で言っても5対5から6対4」と説明。これにSNSなどで所属芸人から反論の声が相次いだ。

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 契約も報酬も不明瞭なままですませているのは、古い体質を引きずっていると言うしかない。所属芸人を1人の人間ではなく、もうけのための「駒」とみているからではないか。

 一連の問題で、吉本が抱えるうみが表に出た。経営体質を抜本的に変えるべきだ。

 「才能あふれる所属芸人たちが、自分らしく活躍できる環境にあることが一番大事にもかかわらず、根本である芸人との信頼関係が揺らいでいる」。岡本社長は会見で語った。人を大事にする「芸人ファースト」の企業に生まれ変われるか。注視したい。