公の場で取材源の開示を要求するとは、報道への圧力そのものだ。

 自民党県連の中川京貴会長と島袋大幹事長が記者会見を開き、県内2紙の参院選報道に抗議した。沖縄タイムスの一部報道について「事実誤認」として訂正を求めたほか、県連幹部の言葉として報じた匿名発言について実名を挙げるよう要求した。琉球新報に対しても県連関係者の発言として書かれた内容が事実と異なるとして抗議した。政治家が選挙報道への抗議で会見を開くとは、異常事態である。

 本紙報道に関して県連が「事実でない」としたのは23日付の記事。参院選沖縄選挙区で敗れた自民公認候補について、議員総会で県議の一人が「公認を取り消してもいいのではないか」と不満を語ったという内容だ。中川氏は会見で「議員総会ではその話は出ていない」として「間違いだ」と断じた。

 しかし本紙記者は総会後、複数の県議から発言を確認している。県議の発言自体を否定するのか問われた中川氏は「非公式で出たものを組織の意見として書かれると迷惑だ」と述べ、発言それ自体は否定しなかった。

 中川氏は幹部が公認候補の戦略を「大失敗だ」とした記事について「一部の個人的な意見を掲載することに抗議する」とも表明した。議員に限らず個人への取材は報道の基本で、この発言は言語道断だ。

 「組織決定していないことを書かれたら困る」との中川氏の発言は、報道の役割を全く理解していない証左で看過できない。この幹部の実名を明かすよう記者に迫ることは、もはや恫喝(どうかつ)以外の何ものでもない。

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 会見には抗議の対象となった県内2紙とテレビ4局、県外3紙と通信社2社が参加した。報道機関に公の場で抗議する行為は、選挙報道に関してマスコミ全体を萎縮させることを狙ったと言われても仕方がない。

 取材源の秘匿は報道機関の生命線だ。組織や権力にとって不都合な情報は、匿名でなければ入手できない場合があり、真実を知るには欠かせない取材手法の一つである。2006年、取材源の秘匿を巡りNHK記者が証言を拒絶した訴訟で最高裁は「報道関係者は原則として取材源にかかわる証言を拒絶できる」とする判断を示している。

 今回の参院選の結果を受けて県連がすべきは、選挙報道に抗議する会見を開いたり、匿名で苦言を呈した幹部の特定に躍起になることではない。6万票もの差を付けられ公認候補が敗れた敗因の分析こそ急ぐべきだ。

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 選挙報道を巡っては14年の衆院選で、自民党本部が、民放とNHKに選挙報道の公平中立・公正を求めて批判を浴びた。自民党県連が開いた今回の会見に通底する行為で、自民という組織の、報道への向き合い方の大きな課題を提示している。

 国民の知る権利に応えるために記者の取材活動はある。選挙で選ばれた議員ならば、なおさら、民主主義の基盤となる権利を脅かす行為は厳に慎むべきだ。