沖縄県内の海岸域で近年、潮害を防ぐ保安林の違法伐採が相次いでいる。県によると、好調な沖縄観光を追い風にホテルやペンションなどの開発ラッシュに伴い、保安林と分からずに伐採する事例が多い。担当者は「目に見えて増えた」と危惧。専門家は「減災効果を持ち、陸の生命や財産を守る海岸林は人々の共通の資源」と保全を訴えている。(北部報道部・又吉嘉例)

1990年代(上)1990年代後半ごろの沖縄本島北部の海岸。中央の海側の森が防潮保安林(読者提供) 2019年(下)現在の同じ場所。県に無断で防潮保安林を伐採し(中央の緑地)利用している宿泊施設(6月撮影)

1990年代後半ごろの沖縄本島北部の海岸。中央の海側の森が防潮保安林(読者提供)

現在の同じ場所。県に無断で防潮保安林を伐採し(中央の緑地)利用している宿泊施設(6月撮影)

1990年代(上)1990年代後半ごろの沖縄本島北部の海岸。中央の海側の森が防潮保安林(読者提供)
2019年(下)現在の同じ場所。県に無断で防潮保安林を伐採し(中央の緑地)利用している宿泊施設(6月撮影) 1990年代後半ごろの沖縄本島北部の海岸。中央の海側の森が防潮保安林(読者提供) 現在の同じ場所。県に無断で防潮保安林を伐採し(中央の緑地)利用している宿泊施設(6月撮影)

■災害を防ぐ役割

 保安林は国や県が公有、民有を問わず指定する。水を蓄え、川の流量を調節する「水源涵(かん)養」のほか、土砂流出、潮害、強風、落石を防ぐ公益的な役割を持つ。指定後は森林の機能を保つため、伐採や土地の形質の変更が規制される一方、損失補償などの措置もある。

 県では2018年3月末現在、森林面積の約3割に当たる3万631ヘクタールが保安林に指定されている。うち国有林は1万7699ヘクタール、民有林は1万2931ヘクタール。

■無断伐採で広場に

 今年6月、本島北部の宿泊施設が防潮保安林のアダンを伐採した後の土地(自治体所有地)を私有地化しているとして、地域住民が行政指導と原状回復を求める陳情書を県に提出した。保安林の皆伐には県の許可が必要だが、施設側は十数年前に約3千平方メートルを無断で伐採していた。

 宿泊施設に隣接する保安林だった場所を訪れると、芝生が張られ広場のようになっていた。客室からは広場越しに海が見え、施設ホームページでは「全室オーシャンビュー」をうたう。

 所有者の男性は前所有者から3年前に施設を購入した際、元々保安林だったという話を聞いたという。「県などと調整し、(原状回復のため)できることはやろうと徐々に植林している」と説明した。現在は県に提出する誓約書と造林計画書を作成している。また、前所有者の男性は「広場を造るため保安林と知らずに切った」と話した。

■消えたウミガメ

 陳情書を県に提出した男性は「伐採後、近くのビーチにウミガメが産卵に来なくなり、オカヤドカリの数も減った。あるがままの自然を生かした観光業の発展を望みたい」と話した。

 海岸林を巡っては、宮古島市で旧城辺町が新城海岸の保安林を無断伐採していたことが2013年までに分かったため、県が市に原状回復を求めた。今年4月にも石垣市のダイビング業者が底地ビーチの樹木を無断伐採していたことが発覚した。

 県の対応も後手に回る。調査などに当たる職員は本島2人、宮古、八重山各1人の計4人にとどまる。県森林管理課は「観光開発が進む中で違反行為が出ているが、手が回っていない。パトロール態勢を強化する必要がある」との認識だ。

減災に効果、命を守る自然

琉球大学の仲座栄三教授(海岸工学)の話

 海岸林は減災効果があるほか、海岸動物のすみかとなる貴重な自然環境。海と砂浜、海岸林は一体的に守らねばならない。開発者は「共有財産を利用させてもらう」という深い理解を持つべきだ。行政は開発を許可する際に自然環境の役割と保護についての講習を受けさせるなど、広報と指導に努めなければならない。