社説

社説[重度訪問介護]国会活動の土台整えよ

2019年8月1日 13:23

 国会のバリアフリー化が進む一方、「仕事でヘルパーが使えない」という制度の矛盾は残ったままである。

 参院選を受けて参院議長らを選出する臨時国会がきょう召集される。

 れいわ新選組から初当選した、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」患者の船後靖彦さんと、重度障がい者の木村英子さんも初登院する。

 大型の車いすを使用する2人を迎え入れるため、参院は車いすのまま議席に着けるよう本会議場の改修作業を行った。採決についても、参院が採用している押しボタンを介助者が押し、正副議長などを選ぶ記名投票の代筆を認める決定をした。

 国会は1977年の参院選で車いすを使用する八代英太さんが当選した後、スロープや多目的トイレの設置が進んだ。

 今回「弱者が住みやすい社会」を訴えた2人が、さらなる変化を促すことになった。

 ハンディを抱えての議員活動をどう保障していくか。施設のバリアフリー化とともに2人が要請するのが障害福祉サービス規定の見直しによる介護保障である。

 船後さんや木村さんのように重い障がいがある人には、生活全般を支える「重度訪問介護」サービスが欠かせない。ただ国は「経済活動にかかる支援」は雇用主らが負担するべきだとの考えから、働いている間は公的支援の対象外としている。

 人格と個性を尊重する共生社会の実現や就労を通じた社会参加の流れに逆行する規定である。

    ■    ■

 参院は7月30日の議院運営委員会理事会で2人の議員活動中の介助費について、参院が当面負担すると決めた。

 臨時国会が円滑に進められるよう、とりあえずの措置なのだろう。だが根本の問題は、なぜ働くと支援が受けられないかだ。制度の抜本的改革により、国会活動の土台を整える必要がある。

 障がい者などでつくる団体は同日、規定を改めるべきだとの要望書を厚労相宛てに提出した。排せつや水分補給といった訪問介護が受けられず、働く機会を奪われている障がい者が大勢いるという。問題は国会活動にとどまらない。

 制度改善の訴えを受け、さいたま市は本年度から在宅就労中も介護が途切れないよう独自の支援を始めた。住民に近い地方自治体が制度の矛盾に気づき、必要なサービス提供に乗り出したのだ。

    ■    ■

 昨年、発覚した中央省庁の障がい者雇用水増し問題は共生の理念に対する意識の低さを露呈するものだった。発覚後の求人に際しても「自力通勤」を条件とするなど問題の根深さが浮き彫りになった。

 障がい者の総数は約963万人と推計され、人口の約7・6%に当たる。決して少なくない数だが、障がい者の国政参加は進んでいない。

 誰もが安心して暮らすことのできる共生社会の出発点は当事者の悩みに耳を傾けることだ。社会の多様性を国会に反映させるためにも、障がい者の就労を妨げる壁を早急に取り除かなければならない。

 
前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
きょうのお天気
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間
沖縄タイムスのイチオシ
「この本を読みましょう」おすすめ図書
「この本を読みましょう」おすすめ図書
大手6出版社のおすすめ図書を紹介。県内書店でぜひ手に取ってみてください。
「#やーでうちなー」プロジェクト
「#やーでうちなー」プロジェクト
今は行けない沖縄を感じる写真を、ウエブ会議の背景用に提供
沖縄こども未来プロジェクト
沖縄こども未来プロジェクト
企業や個人のサポーターの皆様から頂いた支援金で、子どもたちの夢を後押ししています。
新聞記者の取材によるグルメサイト
新聞記者の取材によるグルメサイト
沖縄タイムスの取材による豊富なグルメ記事を掲載。マップから近くのお店を検索できます。参加飲食店募集中!
タイムス住宅新聞社
タイムス住宅新聞社
沖縄の、住まいと暮らしにちょっとした『プラス』を。
沖縄タイムスアカデミア
沖縄タイムスアカデミア
一流の講師陣による少人数の連続講座。同じ志を持つメンバーと実践的なテーマを学びませんか!
沖縄タイムス社 採用情報
沖縄タイムス社 採用情報
定期採用試験の見送りと社会人採用の一時中断のお知らせ
新聞配達員募集
新聞配達員募集
お住いの地域周辺で、空いている時間を活用して働いてみませんか?
乗り切ろうコロナ みんなのエール
乗り切ろうコロナ みんなのエール
新型コロナウイルス 危機を乗り越えるメッセージと写真を募集しています。 皆様のことばをお待ちしております。
ちゅらグルメ×オリオンビール 飲食店応援プロジェクト【PR】
ちゅらグルメ×オリオンビール 飲食店応援プロジェクト【PR】
特設ページ「お店の味をおうちで楽しもう!テイクアウト&デリバリー」の登録店と人気メニュー、店主らの思いを紹介します。