社説

社説[「ホワイト国」除外 ]展望なき泥沼化を危惧

2019年8月3日 09:30

 日韓関係が泥沼化に陥っている。これまでとは全く異なる次元の対立関係に入ってしまったというほかない。

 安倍晋三首相は2日、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取っている「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。半導体材料の輸出管理の厳格化に続く規制強化で、28日に施行する。

 これに対し、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は臨時閣議を開き「非常に無謀な決定だ」と日本を強く非難し、撤回を要求した。日本を世界貿易機関(WTO)に提訴する準備を加速させると発表した。さらに韓国政府は対抗措置として韓国も日本をホワイト国から除外すると表明した。

 韓国政府は、除外で電子部品や工作機械など「千品目以上」に急拡大すると分析。半導体に次ぐ主要産業の石油化学製品や自動車も打撃を受けると危機感を募らせる。

 日本政府は、表向き元徴用工訴訟問題を巡る対抗措置ではないとしているが、元徴用工訴訟の政治的背景があると発言したことがある。

 政治に通商カードを持ち出して韓国に対応を迫ることが適切な方法なのだろうか。展望なきまま、韓国をホワイト国から除外することは回避すべきだったのではないか。

 1998年10月、訪日した金大中(キムデジュン)大統領と小渕恵三首相が署名した「日韓パートナーシップ宣言」を思い起こしたい。金氏は国会で演説し、日本は平和主義を守ってきたと評価。日本には過去を直視すること、韓国には戦後大きく変わった日本の姿を評価し、ともに未来に向けて歩もうと呼び掛けたのである。

    ■    ■

 韓国人元徴用工訴訟で昨年10月、韓国最高裁が日本企業に賠償支払いを命じる判決を出したのが問題の発端だ。

 日本は韓国に政府間協議や、第三国の委員を加える形で仲裁委員会開催を要請したが、韓国は応じなかった。

 事態の沈静化に動かず、放置してきた韓国側の責任は問われなければならない。

 日本の規制強化に対し、韓国国会では与野党超党派で日本に向き合っている。日本製品の不買運動が広がり、日本への旅行が自粛される。自治体や民間の交流事業も相次いで中止されるなど政府と歩調を合わせている。

 北朝鮮が7月下旬から1週間余りで3度も短距離弾道弾とみられるミサイルを発射している。影響が安全保障にも及べば、日韓ばかりか、日米韓の関係が根本から揺らぐことになりかねない。

    ■    ■

 懸念されるのは、日韓双方が、「嫌韓」「反日」の国内世論を意識して強硬姿勢をエスカレート。政権浮揚につなげようとしているように見えることだ。

 安倍首相は参院選の最中から保守層の支持固めをする言動をしていた。文政権は支持率が低迷していたが、ここに来て2週連続で5割を超えている。8月15日は日本統治から解放された「光復節」である。双方のナショナリズムが高まれば、事態を悪化させるばかりだ。

 もつれた糸を解きほぐすのが外交である。日韓双方に理性的な対応を求めたい。

 
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