第29回沖縄県医師会県民公開講座「働き盛りの健康づくり」

 「働き盛りの健康づくり」をテーマに、第29回県医師会県民公開講座が7月27日、ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城で開かれた。主催は県医師会、沖縄タイムス社。働き盛り世代とされる65歳未満の死亡を防ぐために、死亡原因で最も多い高血圧関連疾患への対策を3人の講師が解説した。約300人が参加し、日頃から血圧管理を心掛けることの大切さを学んだ。

安里哲好氏(県医師会会長)

講演前に健康度の無料測定をする参加者

参加者からの質問に答える(左から)崎間敦氏、安里哲好氏、砂川博司氏=27日、那覇市・ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

砂川博司氏(県医師会理事)

崎間敦氏(琉球大学グローバル教育支援機構保健管理部門教授)

基調講演に耳を傾ける参加者=7月27日、那覇市・ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

安里哲好氏(県医師会会長) 講演前に健康度の無料測定をする参加者 参加者からの質問に答える(左から)崎間敦氏、安里哲好氏、砂川博司氏=27日、那覇市・ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城 砂川博司氏(県医師会理事) 崎間敦氏(琉球大学グローバル教育支援機構保健管理部門教授) 基調講演に耳を傾ける参加者=7月27日、那覇市・ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

登壇者【基調講演】

安里哲好氏(県医師会会長、ハートライフ病院理事長)
砂川博司氏(県医師会理事、すながわ内科クリニック院長)
崎間敦氏(琉球大学グローバル教育支援機構保健管理部門教授)
【座長】石川清和氏(今帰仁診療所院長)

30~64歳の高い死亡率 高血圧に原因 予防策へ力

安里哲好氏(県医師会会長 ハートライフ病院理事長)

 沖縄県は1995年に世界長寿地域宣言をしたが、2010年には平均寿命の順位が男性30位、女性3位へ転落する330ショックがあった。県民の平均寿命は延びているが、男性は全国と比べると伸び率が低い。平均寿命の順位転落を考えたとき、1~20歳は他府県と比べて問題はなく、70歳以上は今でも上位で元気だ。

 当初は特定健診の40~74歳を分析し、生活改善などの対策をしようとした。しかし、沖縄県は肥満が多く、もっと若い30代を含め、30~64歳の働き盛り世代を対象にすることにした。

 県内では、高齢者は元気だが、働き盛り世代の死亡率が全国に比べて大変厳しい状況にある。男性はワースト5位、女性はワースト4位。2015年の30~64歳の死亡数は1909人で、男性1294人、女性615人。死亡原因は高血圧関連疾患が284人で最も多かった。血圧をきちんとコントロールして、脳内出血や急性心筋梗塞などを未然に防ぐ必要がある。

 日本は世界に誇る国民皆保険制度で、生涯にわたって健診が受けられる。30~65歳には特定健診やがん検診などがある。

 65歳未満の死亡率を改善するプロジェクトで、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの発症と重症化の予防に向けた施策を講じている。特に高血圧対策は、県内の65歳未満の死亡原因の多くを占める脳血管疾患や心疾患などの循環器疾患を改善するために最も有効で、プロジェクトの重点課題に位置付けている。

 適切な血圧を管理する社会づくりを推進し、みんながどこでも気軽に血圧が測れ、自分の血圧が適正であるかを理解できる環境を整えていく。市町村や企業との連携、特定健診の受診率向上に取り組み、高血圧関連疾患の死亡を防ぎ、脳出血ゼロを目指す。

メタボ発症 沖縄が全国1位 特定健診受け早期発見

砂川博司氏(県医師会理事 すながわ内科クリニック院長)

 沖縄県が全国で該当率1位のメタボリック症候群の危険性は、手遅れになるまで自覚症状がほぼないことだ。数値でしか自分の病気の状態が判断できない。隠れた病気をあぶり出し、リスクがあれば早期に指導・治療につなげる特定健診が重要になる。

 肥満に加え、高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病が合わさると、命に関わる心筋梗塞や脳卒中を招きやすくなる。実例を挙げると、公務員のAさんは54歳で脳梗塞を起こし半身まひになった。30代から太っていたが痩せられず、そのうち中性脂肪の数値が高くなり、血圧が上がって50代で倒れた。

 肥満を起点に、最初はメタボリック症候群の軽い段階、少しずつ血圧、血糖、中性脂肪が上がっていく。自覚症状がないからといって放置すると重症化し脳血管障害や心疾患などを起こす。重症患者の大半がAさんと似た経過をたどっており、病気の連鎖をドミノ倒しに例えて「メタボリックドミノ」と呼ばれている。ドミノ倒しは、健診による早期発見と治療で防げる。

 しかし一方で、働き盛り世代の多くが特定健診を受けていない。医療機関にかからず健診も受けていない層も一定数いる。沖縄は入院費は全国上位だが、外来医療費は43位。重症化してから医療機関を受診し、即入院となるのが沖縄の特徴だ。

 特定健診は年に1度、40歳以上75歳未満は無料で、地域のクリニックなどで気軽に受けられる。時間がなくても、お金がなくても受けてほしい。

 働き盛り世代の健康を守るため、まず特定健診を受けよう、受けさせよう。もし異常を指摘されたら、必ず医療機関を受診し、生活習慣の改善や治療を絶対中断しない、させない。地域や職場、家庭で声を掛け合い、健康長寿に取り組もう。

無症状で危険な高血圧 適正な治療 投薬で抑制

崎間敦氏(琉球大学グローバル教育支援機構保健管理部門教授)

 高血圧は、無症状で脳卒中や心筋梗塞などに突然なるため「サイレントキラー」(沈黙の暗殺者)と呼ばれている。

 日本の高血圧患者は推計4300万人で、沖縄県内にも40万人以上と推計される。このうち血圧をコントロールできている人は3割しかおらず、残る7割は自覚症状がないため高血圧に気付いていないか、コントロールできていない。

 高血圧治療は大きく進歩しており、血圧は治療を受け、適切な薬を飲めばしっかりコントロールできる。にもかかわらず、治療を受けていない人々が多数存在する。「高血圧パラドックス」と呼ばれる現象だ。

 日本の脳卒中や心筋梗塞など脳心血管病の死亡を引き起こす最大の危険因子は高血圧だ。さらに、要介護の要因となる脳卒中と認知症のベースにあるのも高血圧だ。

 沖縄は働き盛りの脳出血が多く、50代から急激に脳出血が増えるのが特徴だ。沖縄の65歳未満の死亡理由を分析すると、高血圧関連疾患が一番多い。高血圧の人が多いために脳出血も多いと考えてもらっていい。

 血圧が高いと、高い圧が血管の内側を傷つける。内側を傷つけると動脈硬化が進み、それとは別に血栓や血の塊もできやすくなる。血管が狭くなるために血の塊ができやすくなる。それがある日、突然脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などを引き起こす要因となる。

 沖縄の医療で、高血圧がノーマークになっていたかもしれないと反省もしている。高血圧は症状がない。まずは自分の血圧を知るために測ろう。より正確なのは各家庭で、日常的に血圧を測ること。そして、生活習慣を修正するために減塩に取り組もう。沖縄は全国一薄味の県。減塩先進県の沖縄から健康を発信できるかもしれない。今こそ、高血圧対策に本格的に取り組もう。

【質疑応答】減塩の食事 運動で生活改善

 Q 50代でウオーキング中に、塩分を取るべきか。適切な血圧の測定回数は。

 崎間敦氏 炎天下での競技などで大量に汗をかく場合を除き、普通の健康増進レベルであれば、塩を取る必要はない。県民は食塩摂取量は必要以上に取っている。あと2~2.5グラム減塩した方がいい。みそ汁1日2杯を1杯にするとか、外食で菓子パンを食べるなら半分に減らすなど、ちょっとした工夫でかなり減塩ができる。血圧は基本的に朝1回、寝る前に1回測れば十分だ。

 Q 1日3食しっかりと取るべきか。中性脂肪が高いとどう影響があるか。

 砂川博司氏 100パーセントの正解はないが、3食が通常勧められている。朝を抜いて昼を食べるとかなりの頻度で高血糖が生じる。アルコール、果物、炭水化物の取り過ぎは動脈硬化のリスクとなり得る中性脂肪の増加原因になるので控えてほしい。

 Q 血圧を注意していても死亡することがあるか。

 崎間氏 上の血圧が115から上がるにしたがって脳卒中や心筋梗塞が増える。軽症の高血圧でも140ちょっと超えれば注意して、血圧の治療をすること。基本的には減塩など生活習慣の改善や運動での体重管理が大事になる。