県内の最低賃金は10月3日から時給790円に引き上げられる。現行の762円から28円(3・7%)増で、沖縄地方最低賃金審議会が答申した。中央審議会が示す県内の引き上げ目安額(26円)を上回る、過去最大の上げ幅だ。好調な県内経済を反映した形で、歓迎したい。

 中央審議会は2019年度の最低賃金の引き上げ目安を27円(3%)とし、全国平均で901円とすることを決めた。これにより東京都(現行985円)は1013円、神奈川県(同983円)でも1011円と、それぞれ初めて時給千円を超える見通しだ。

 政府は、最低賃金の全国平均について、早期に千円を目指すことを経済財政運営の指針「骨太方針」の原案に盛り込んだ。直近の参院選でも与野党の多くが時給千円かそれ以上を目指すことを公約に掲げた。4年連続の年率3%引き上げは、こうした動向を踏まえたものでもある。

 最低賃金は全ての労働者のセーフティーネットであり、着実な上昇に向けて政治が機能していることは評価できる。

 ただし、引き上げ目安額は都道府県をA~Dランクに分けて示され、Aランクが28円に対しDランクは26円にとどまった。

 その結果、最低賃金の地域格差は、最も高い東京都と、最も低い鹿児島県で226円となり10年前の1・4倍に広がった。全国平均を上回るのはAランクの地域を中心に7都府県にとどまる。

 地域格差は働き手の流出を生み出す。地域活性化の観点からも、ランクごとに引き上げ幅を決める現在の目安額の在り方を見直すべきだ。

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 非正規社員の割合が多い沖縄でも地域格差の是正は重要な鍵となる。県内の求人倍率は33カ月連続で1倍台を維持し好調だが、正社員の有効求人倍率は依然として全国と差があり、雇用の質の課題は残ったまま。最低賃金が県内の多くの労働者の賃金水準に直結する現状では、さらなる引き上げが必要だ。

 一方で、最低賃金の引き上げは、中小零細企業にとっては人件費の負担増となる。日本商工会議所は「倒産や廃業の増加を引き起こす」として急激な引き上げに警戒しており、支援が必要だ。

 厚生労働省は、賃金を一定以上引き上げた中小企業を対象にした助成制度などを設けるが、企業が懸念を払拭(ふっしょく)できるような支援メニューの充実が求められる。

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 労働者の所得が増えることは消費力の強化につながるとして、海外では、最低賃金の引き上げを経済政策として活用する動きが広がる。特に賃金が安いアジア諸国で顕著だ。日本の最低賃金はアジアではトップクラスだが、先進国の中では低い。経済協力開発機構(OECD)調査では最も高いフランスの66%にとどまる。

 今回の全国平均の時給でフルタイムで働いても年収は200万円以下だ。働いているのに貧しい「ワーキングプア」問題の解消にはほど遠い。全ての働く人が希望の持てる賃金の底上げがまだ必要だ。