厚い胸板の肺活量から吹き鳴らされるトランペットの音色。日本を代表するオーケストラのNHK交響楽団で首席奏者を務め、6年前に他界した祖堅方正さんは豪放磊落(らいらく)な人柄で、自らの壮大な夢を周りに語って聞かせた。最たるものが沖縄に一流のプロのオーケストラをつくることだった

▼25年在籍したN響を辞め、琉球交響楽団を発足したのが2001年。「沖縄の演奏家が安心して活動できる土壌を整える」。才能豊かな若者の働き口がなく、県外へ出て行く状況を変えたかった

▼志を継いで18年。「これほど純粋に情熱を傾け、苦悩する楽団はどこにもない」。日本中の楽団と共演してきた指揮者の大友直人さんは断言する

▼オーケストラはどこも入場料収入だけでは運営できず、国や自治体の公的支援が頼みの綱。一方、琉響にはそれがなく、団員が手弁当でやりくりする

▼日本オーケストラ連盟によると、加盟36団体の17年度の活動収入で公的支援の割合は24%。地方だと群馬52%、兵庫62%と跳ね上がる。琉響が新アルバム制作費をクラウドファンディングで募るのも、やむにやまれぬ苦悩がにじむ

▼祖堅さんは生前「世界中で音大がある街には必ずプロの楽団がある」と語っていた。優れた音楽は観光立県の有力なアイテムにもなるはず。その志を夢で終わらせたくない。(西江昭吾)