愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、元「従軍慰安婦」を象徴した「平和の少女像」などを展示した企画展「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれたことを受け、沖縄県在住の彫刻家、金城実さん(80)が自身初となる「慰安婦像」の制作に取り組んでいる。「意に沿わないものは排除するという、戦時下の芸術への弾圧を思い起こさせる。芸術家が屈してはいけない」。表現者の一人として、不当な「圧力」に抗議する。(中部報道部・大城志織)

怒りと悲しみを持った「慰安婦像」の制作に励む金城実さん=10日、金城さんのアトリエ

■少女ではなく現在の姿に

 元「慰安婦」と直接の面識はないが、「平和の少女像」を制作した韓国の彫刻家夫妻と交流があり、慰安婦に関するシンポジウムに出席するなど知識を深めてきた。これまで「慰安婦」に関する作品づくりは「おこがましい」と感じていたものの、展示会中止に危機感が募り、制作を決めた。

 8日からホルトノキを材料にチェーンソーやノミで削る作業を開始。「当時20歳前後だった少女たちが差別の歴史をずっと生き抜いてきた」との思いで、少女ではなく現在の90代前後の姿をイメージした。

 像は目は閉じ、口を開けて「私の春を返せ」と怒りと悲しみを叫ぶ様子を表現。10日時点でほぼ半分以上は出来上がったといい、服や座っている足などを今後仕上げる。完成後の行き先は未定だが「しかるべき所に落ち着いてほしい」と話す。

■戦争を生き残った者の務め

 沖縄戦時に朝鮮半島から強制動員され犠牲になった軍夫らを追悼する「恨之碑」(読谷村)や、チビチリガマの「世代を結ぶ平和像」(同村)などを制作してきた金城さん。慰霊塔や記念碑を造ることについて「時間とともに風化していく戦争を後世に伝えていくのは生き残ったものの務め」と力を込める。

 「平和の少女像」には「少女たちが人間の尊厳を傷つけられた歴史から目をそらさないという彫刻家の思いが込められている」と感じる。「戦争を二度と起こしてはならない。悲惨な記憶を呼び覚ます崇高な芸術としての価値を認めるべきだ」と訴える。