学校法人森友学園(大阪市)を巡る国有地売却や財務省の決裁文書改ざん・廃棄問題で、大阪地検特捜部は佐川宣寿元国税庁長官ら10人を再び不起訴とした。発覚から2年余り。安倍政権への忖度(そんたく)疑惑が浮上した問題の捜査は誰一人、刑事責任を問われることなく終結した。

 評価額9億5千万円余りの国有地がなぜ8億円余も値引きされたのか。前代未聞の決裁文書の改ざんを指示したのは誰か。法廷で一連の不正や疑惑の真相に迫る機会を失った。到底納得できない。

 特捜部は昨年5月、財務省の関係者38人全員を不起訴としていた。だが、大阪第1検察審査会が10人について「不起訴不当」と議決した。議決で、改ざん当時に理財局長だった佐川氏に対し、「『(改ざんを)指示していない』」との本人供述は信用性がないと指摘。文書改ざんに「一般市民からすると、いかなる理由があっても許されず、言語道断」と批判していた。国有地の値引きで国に損害を与えたとされた背任容疑にも徹底した捜査を促していた。

 特捜部は、再捜査でも「起訴するに足りる証拠を収集することができなかった」ことを理由に、嫌疑不十分で不起訴とした。強制起訴につながる「起訴相当」の議決とは異なり、「不起訴不当」では再審査はされない。真相解明の「最後のとりで」としての検察への期待は裏切られた。

 告発側の弁護士らは不起訴に、政権への「忖度」があったと批判する。疑念を晴らすため、特捜部は再捜査で明らかになった事実や不起訴の理由を十分に説明すべきだ。

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 一連の問題の発端となった大幅値引きは2017年2月に表面化。国有地で開校予定だった小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が一時就任していた。問題の核心は、土地取引の背後に、安倍政権の関与もしくは配慮がなかったのかという点である。

 その見方を裏付けるかのように、改ざんは同年2月下旬から4月にかけて14件の文書で行われ、昭恵夫人の名前や「特例的な内容」といった文言が削除された。疑念はさらに深まった。

 公文書管理法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付ける。行政機関の意思決定が適切、公正になされたか検証するのに欠かせない。

 改ざんや不当な廃棄は国民の知る権利を損ない、民主主義の土台を壊す行為だ。

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 今後の疑惑追及は国会に期待するしかない。国会には行政を監視し、その不正をただすことで国民にこたえる役割が求められる。憲法で認められた国政調査権を駆使し、徹底して真相を明らかにする責任がある。

 財務省側の中心人物、佐川氏は昨年3月の国会の証人喚問で「刑事訴追の恐れがある」ことを理由にことごとく証言を拒否した。不起訴が確定し、訴追の恐れはなくなった。あらためて証人喚問し、改ざんの動機や経緯をただすべきだ。

 捜査は終結したが、真相解明をうやむやのままにしてはいけない。