シンポジウム「多様性世界を生き抜く沖縄の力(レジリエンス)を求めて」(主催・放送大学沖縄学習センター、共催・沖縄タイムス社)が11日、那覇市の県立図書館で開かれた。2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、将来を担う人材育成や沖縄の未来を開く多様性について意見を交わした。当日の議論を紹介する。(社会部・新垣玲央、徐潮)

シンポジウム「多様性世界を生き抜く沖縄の力(レジリエンス)を求めて」でパネリストの講演に耳を傾ける来場者=11日、那覇市泉崎・県立図書館

探求から始まる未来への一歩をテーマに語る県子供科学技術人材育成事業の岸信朋プロジェクトリーダー=11日、那覇市泉崎・県立図書館

女性の社会進出と高等教育をテーマに語る放送大学長崎学習センターの伊東昌子所長=11日、那覇市泉崎・県立図書館

沖縄経済の持続的な発展を可能にするダイバーシティ経営を考えると題して語る沖縄ツーリストの東良和会長=11日、那覇市泉崎・県立図書館

本土と比べ、外国人から見た沖縄の文化・経済の魅力と題して語る北京大学国際関係学院アジア経済文化研究所の王春生事務局長=11日、那覇市泉崎・県立図書館

新県立図書館のこれからの役割をテーマに語る県立図書館館の平良朝治館長=11日、那覇市泉崎・県立図書館

特別講演で豊かな沖縄の文化とリカレント教育について語る放送大学の池田龍彦副学長=11日、那覇市泉崎・県立図書館

シンポジウム「多様性世界を生き抜く沖縄の力(レジリエンス)を求めて」でパネリストの講演に耳を傾ける来場者=11日、那覇市泉崎・県立図書館 探求から始まる未来への一歩をテーマに語る県子供科学技術人材育成事業の岸信朋プロジェクトリーダー=11日、那覇市泉崎・県立図書館 女性の社会進出と高等教育をテーマに語る放送大学長崎学習センターの伊東昌子所長=11日、那覇市泉崎・県立図書館 沖縄経済の持続的な発展を可能にするダイバーシティ経営を考えると題して語る沖縄ツーリストの東良和会長=11日、那覇市泉崎・県立図書館 本土と比べ、外国人から見た沖縄の文化・経済の魅力と題して語る北京大学国際関係学院アジア経済文化研究所の王春生事務局長=11日、那覇市泉崎・県立図書館 新県立図書館のこれからの役割をテーマに語る県立図書館館の平良朝治館長=11日、那覇市泉崎・県立図書館 特別講演で豊かな沖縄の文化とリカレント教育について語る放送大学の池田龍彦副学長=11日、那覇市泉崎・県立図書館
【総合司会】藏根美智子さん(放送大学客員准教授)
【コメンテーター】富永大介さん(放送大学沖縄学習センター所長)

子の探求心を育んで

岸信朋さん(県子供科学技術人材育成事業プロジェクトリーダー)

 県内で中高校生を対象にサイエンスリーダー養成講座を行っている。テーマを設けて大学の先生や研究者と専門的な事を学ぶプログラム。いろんな学校から学年や年齢、成績にかかわらず、同じ興味を持った仲間が集まる。議論は活発で、講座後も常に考え続ける。

 科学力は疑問に思うことがスタート。自分で仮説を立てて実証・検証し、答えを見つける。この繰り返しが探求につながる。科学的思考は課題解決の力。決して理系だけの話ではない。情報化社会の中で何が正しくて、間違っているか。主体的に課題を見つけ、自分事として、どう捉えるかが大事だ。

 これからの人材育成は探求心を積み重ね、実体験と失敗を繰り返すことが大切。大人はすぐ教えるのではなく、伴走者として子どもたちを見守ることが必要だ。考える力を子どもたちと一緒につくってほしい。

女性の活躍に支援を

伊東昌子さん(放送大学長崎学習センター所長)

 世界的に優れた論文が掲載される雑誌がある。そこに載っている論文は男性だけ、女性だけのチームより、男女混合チームの成果が高いことが示されている。持続可能な社会と人々の幸せにジェンダーの平等が必要。それを成し遂げるには仕事と生活の両立支援、ポジティブアクション(女性の活躍)、無意識の偏見解消が必要だ。

 日本の女性の大学進学率は伸びているが、男性より低い。先進国では女性の方が大学への進学率が高い。昨年の世界のジェンダー・ギャップ指数で日本は110位で男女格差が大きい。一方、男女格差が低い国ほど、国内総生産(GDP)は高い。

 男性であることで評価が上がり、女性であることで評価が下がってしまう研究調査もある。固定観念や無意識の偏見が女性の活躍を阻む。女性は自分に自信を持って頑張ってほしい。

観光業 やりがい重要

東良和さん(沖縄ツーリスト会長)

 最近、観光公害という言葉があるが、私は成長痛と呼んでいる。日本で観光立国は2003年にいわれたばかりでまだ15年ほど。欧州の国々は100年以上観光を推進し、観光公害のような壁にぶつかってはみんなで考えて克服している。

 訪れる人々の満足度を高めると同時に、受け入れる地域社会のストレスをどう最小化するかが今後の課題。なかなか政策は出ないが、22年から始まる6次振計でも考えるべきだ。

 観光従事者のやりがいや待遇、QOL(生活の質)の好循環も非常に大切。来てもらってうれしい観光業のため、地域主導型のコントロールも必要だ。

 日本はインバウンド4千万人、消費額8兆円を目指すが、沖縄企業もそのマーケットをどう取るか。地方でもICT(情報通信技術)で国境を越えたビジネスができる。その人材を育てないといけない。

豊かな自然環境活用

王春生さん(北京大学国際関係学院アジア経済文化研究所事務局長)

 数年前に読んだ大田昌秀前知事のインタビューでは、本土の家に刀があるのに対し、沖縄の家にあるのは三線だという。沖縄の人々が平和を愛する人間だと思った。

 沖縄がアジアの発展に本土以上に寄与する方法は、豊かな自然環境を生かすことだと思う。特色ある島々。独自の歴史文化。沖縄の風景が醸し出す癒やしの雰囲気。その特性を活用した医療ツーリズムなどを実施して、ハワイよりもっと強い観光ブランドとなるように頑張ってほしい。

 経済面では、アジアの主要都市に近い沖縄の地理的優位性や本土より安いコストをPRする。海外企業を誘致し沖縄を拠点に本土へ進出することや、日本企業が沖縄を拠点に世界に進出することができる。

 グローバル化、イノベーションを念頭に頑張れば、琉球王国以上の輝きを取り戻せる。

図書館から情報発信

平良朝治さん(県立図書館館長)

 県立図書館は1910年に開館。本館は昨年12月にリニューアルオープンした。「図書館は沖縄の心である。図書館は全てに開かれている」は初代館長、伊波普猷先生の言葉である。県立図書館のこれからの役割は、全てのニーズに応えることだろうと思う。

 新県立図書館の基本計画では、琉球・沖縄の「知と心 文化創造のランドマーク」がコンセプトになっている。特徴的な取り組みとして雇用や就業、ビジネス支援につながる情報コーナーや、外国語の読み聞かせなどの多文化エリアを設置した。郷土資料室で貴重な資料をそろえ、各調査の手伝いなどもしている。

 今後さらなる資料の充実や、組織の効率化、職員の資質向上などを図る。多様なニーズに応えられるよう、普段からいろいろな準備をしたい。図書館の使用は無料なので、ぜひ多くの人たちに活用してほしい。

問題解決力こそ学び

特別講演 池田龍彦さん(放送大学副学長)

 知識を増やすことだけでなく、問題解決能力を高めることが学びだ。経済・社会活動や健康、防災、女性の地位向上などは学びによって実現でき、円滑な社会参加を促進する。

 生涯学習は、人々が生涯に行うあらゆる学びのこと。一人一人が人格を磨いて豊かな生活を送り、学習の成果を適切に生かすことができる社会が大切だ。

 日本は25歳以上の大学入学者の割合がわずか2%だが、ヨーロッパなどは全体の3分の1以上。働いても大学で勉強しようという人が多い。日本も終身雇用の数が減ると、その傾向が増える可能性がある。

 リカレント教育は学び直しと考えてもらえればいい。本来は英語で、職業上必要な知識・技術を習得するために働いた職場を辞めて大学に入り、また就職し直すという意味。フルタイムで就学と就職を繰り返すことを指している。ヨーロッパでは多いが、日本では働きながら勉強することを含めた教育もリカレント教育だと言える。

 心の豊かさや生きがいのため、学校以外の場で働きながら学ぶことが重要。県や市町村の生涯学習や各プログラムに参加するのも手段の一つ。放送大学のような所もリカレント教育にふさわしい場だ。