戦後74年の「終戦の日」を迎えた。

 先の大戦で亡くなった日本人は、軍人と民間人を合わせて約310万人。沖縄戦の犠牲者は20万人余を数える。

 悲惨な戦争を繰り返さないために、歴史と体験をどのように後世へ語り継いでいくか。戦争体験者が人口の2割を切る中、戦争の実相の掘り起こしと記憶の継承は私たちに課せられた課題である。

 あらためて思い起こしたいことがある。8月15日は終戦の日であると同時に大日本帝国が米国などの連合国に敗れ、崩壊した日だという点だ。

 日本の敗戦は、日本の植民地支配下にあった朝鮮の人々にとっては「解放」の日と位置付けられ、日本と戦った中国では抗日戦争勝利の日とされている。

 日本の敗戦によってアジアの人々はどのような戦後を迎えることになったのか。

 敗戦の暮れ、衆院議員選挙法の改正で、かつて「帝国臣民」だった在日朝鮮人や台湾人ら旧植民地出身者と、沖縄県民の選挙権が停止された。

 サンフランシスコ講和条約発効の際、旧植民地出身者は、国籍選択権を認められないまま日本国籍を失った。

 冷戦の顕在化によって朝鮮半島は南北に分断され、沖縄は復帰までの27年間、米軍統治下に置かれた。沖縄や韓国、台湾が反共軍事拠点として冷戦の最前線に置かれたことを忘れてはならない。

 終戦の日は、先の大戦の犠牲者を追悼し平和を祈念する日であるが、戦後、アジアの人々がたどった歴史体験にも目を向けたい。

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 気がかりなのは、国交正常化以降、最悪ともいわれる日韓関係である。

 日本軍「慰安婦」問題で悪化した関係は、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟判決で抜き差しならない事態となり、輸出管理の優遇対象国から韓国を除外する決定で泥沼の状態に陥った。

 元徴用工問題を巡り河野太郎外相が駐日韓国大使の発言を遮る形で「極めて無礼だ」と怒りをあらわにする場面があった。韓国の文在寅大統領は優遇国除外で「盗っ人たけだけしい」と日本を批判するなど非難の応酬が続いている。

 深まる亀裂は、政治とは別に市民らが積み上げてきたスポーツイベントや観光交流にも影響を及ぼしている。

 両国で「嫌韓」「反日」の感情が沸騰する現実は異常であり、若者の交流などを通して両国の国民感情を和らげていく努力が必要だ。

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 きょう、東京では政府主催の全国戦没者追悼式が開かれる。韓国では日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典が開催される。

 安倍晋三首相は第2次政権発足後、一貫して加害責任への言及を避けているが、今回はどのような言葉を発するのか。文大統領は日本との関係について何を語るのか。

 相互の理解と信頼に基づいた関係を築いていくためにも、非難の応酬をひとまず自制し、冷静に着地点を探らなければならない。話し合いの窓口を閉ざすようなことがあってはならない。