児童虐待防止に向けた連携をより密にするため、児童相談所を設置する沖縄県と沖縄県警は16日、児相が虐待だと判断した全ての事案の情報を県警に提供する新たな協定を結んだ。これまでの旧協定では、児相から県警への情報共有の基準は、顔面・頭部への身体的虐待や夜間の見守りが必要なケースなど緊急性の高い事案に限定されていた。

児童虐待を巡る情報共有

児童虐待の全件共有に関する協定を結んだ県の大城玲子子ども生活福祉部長(右)と県警の小禄重信生活安全部長=16日、県庁

児童虐待を巡る情報共有 児童虐待の全件共有に関する協定を結んだ県の大城玲子子ども生活福祉部長(右)と県警の小禄重信生活安全部長=16日、県庁

 県警が先に把握した虐待事案は児童虐待防止法で児相への全件通告が義務付けられているが、児相から県警への情報提供には定めがなく、基準は各自治体に委ねられている。

 虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」(東京都)によると、「全件共有」は少なくとも沖縄を含む全国22道府県・政令指定都市などで導入されている。東京都目黒区で起きた5歳児の虐待死亡事件を受けて厚生労働省が昨年7月示した共有基準の指針を上回る対応となる。

 県と県警が2007年に締結した旧協定は、児相から県警への共有基準を「病院治療が必要な虐待(特に乳児)」「子どもに面会ができない」など14事例に限定。このため県内児相が昨年度対応した虐待事案1100件のうち、県警が最初に把握し児相に通告した事案を除く338件中282件が共有されずにいた。

 県庁で16日にあった締結式で、県の大城玲子子ども生活福祉部長と県警の小禄重信生活安全部長が新協定に署名した。大城部長は「県警に援助要請や一時保護で協力いただいてきたが、一層の連携強化で虐待の未然防止や子どもの安全確保に全力で取り組む」、小禄部長は「より迅速かつ的確に児童の虐待防止、安全確保に取り組む」と述べた。

子を守る大きな一歩         

 シンクキッズ代表理事で後藤啓二弁護士の話 児相から県警への「全件共有」は手段にすぎず、実際に虐待から子どもを守れなければ意味はない。だが過去に両者で情報が共有できていれば防げる命は数多くあり、大きな一歩だ。
 例えば、県警に110番通報があったときに、児相から提供されたデータと照会できれば要注意かどうかが分かり、的確な対応の判断につながる。
 親の育児放棄(ネグレクト)で夜中外にいた子どもがいて、親が「迷子だ」と言い張った場合、過去に児相との接触があるかが県警で分かればリスクを見逃さない。
 情報を児相だけで抱え込めばリスクを軽く見誤ってしまう恐れもある。情報共有を通して両者の信頼関係が培われるのも期待できる。

(写図説明)児童虐待の全件共有に関する協定を結んだ県の大城玲子子ども生活福祉部長(右)と県警の小禄重信生活安全部長=16日、県庁

(写図説明)児童虐待を巡る情報共有