元徴用工問題に端を発した日韓の対立は通商分野から安保分野に拡大する決定的な局面に突入した。

 韓国大統領府は、日本と結んでいる軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)を破棄することを決め、日本側に通告した。これで協定は11月22日を最後にわずか3年で終了することになる。

 日米韓が安全保障上、協力関係にある象徴的な協定だっただけに破棄は日韓の信頼関係が崩壊の危機にあることを意味する。日米韓を軸とした北東アジアの安全保障体制が揺らぐことになりかねない。

 韓国側は日本の輸出規制強化が「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」ことを理由に挙げ、「韓国の国益にそぐわない」と指摘した。また、日本の植民地支配からの解放を記念する今月15日の「光復節」の演説で文在寅(ムンジェイン)大統領が日本との対話を呼び掛けたにもかかわらず、日本側が公式に何の反応も示さなかったことも理由とした。

 今月21日に中国で開かれた日韓外相会談でも河野太郎外相が元徴用工問題で解決策の提示を、康京和(カンギョンファ)外相は対韓輸出規制強化の撤回を求めたが、平行線に終わった。

 日本も、元徴用工問題に通商分野を絡め、輸出管理で韓国を優遇対象国から除外する「対抗措置」を取るなど対立の責任を負っている。

 互いに主張するばかりでは出口の見えない報復合戦と言わざるを得ない。沈静化に向けて努力する姿勢が見えないのである。両国にとって大きなマイナスというほかない。

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 協定は2016年に結ばれた。軍事上の機密情報を共有する際、第三国への漏えいを防ぐため、情報の保護を義務付けるものだ。

 北朝鮮の急速な核・ミサイル開発に伴い、米国の求めに応じて結び、毎年自動延長されてきた。米国は軍事衛星や偵察機、日本は電波傍受、韓国は関係者から直接情報を入手するヒューミント(人的情報活動)が強みだった。

 頻繁に発射している北朝鮮の短距離弾道ミサイルは韓国と日本を射程内に迎撃が難しい新型とみられる。日米韓の連携が必要な時である。

 日韓対立が利するのは北朝鮮だけでない。中国とロシアは今年7月、日本海から東シナ海にかけて合同パトロールを実施。ロシア軍の空中警戒管制機が日韓が領有権を主張する島根県の竹島周辺の領空を侵犯、韓国軍が警告射撃をした。日韓関係にくさびを打ち込むためとの見方がある。

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 韓国からの訪日観光客は自粛ムードが広がり、減少が著しい。草の根の文化交流にも影響が出ている。

 日韓首脳会談は長く途絶えている。ここは安倍晋三首相と文大統領が直接会談して打開策を探るべきだ。これ以上、日韓関係を修復不能にまでこじれさせては、両国だけでなく、北東アジア地域を流動化させる懸念がある。

 協定が切れる11月22日まではまだ時間がある。日韓はあらゆるルートを使って首脳会談を実現してもらいたい。両首脳による理性的な外交こそがもつれにもつれた問題を解きほぐす鍵である。