「私には夢がある」。1963年のきょう、米国のキング牧師が歴史的な演説をした。夢とは人種や出自によらず、すべての人が差別を受けない社会の実現。南部州を中心に、黒人の権利を制限する法律がまかり通っていたからだ

▼白人の女性看護師がいる病院に、患者の黒人男性は入れないという法も。肌の色は命さえ軽くした。キング牧師の運動が黒人蔑視の社会を変え、米議会は翌64年、人種差別を禁じる公民権法を制定した。特徴は非暴力の徹底だった

▼インドのガンジーが提唱し、沖縄の阿波根昌鴻さんも重視した。有名なのはバス・ボイコットだ。50年代、白人に席を譲らなかった黒人が逮捕された

▼黒人たちはバス乗車を拒否。382日間、時に何十キロも歩いて移動した。黒人女性の言葉が残る。「自分のためじゃない。子や孫のために歩いているんです」。辺野古の新基地建設反対を貫いた、故翁長雄志さんの口癖を思いだす

▼米連邦最高裁は、バス内の人種差別を違憲と認定。運動は成功した。暴力による抵抗なら、白人権力者に武力で鎮圧されただろう。粘り強い非暴力の行動は、相手を交渉のテーブルに着かせる力がある

▼キング牧師に、今の沖縄に通じる言葉がある。「私たちは、限りある失望を受け入れなければならない。しかし、無限の希望を失ってはならない」(吉田央)