老後の生活の柱になる公的年金の長期的な見通しを試算する財政検証は、モデル世帯の年金水準で約30年後に2割近く目減りする結果になった。基礎年金(国民年金)部分に限ると約3割低下する。

 現役世代の平均手取り収入に比べ、月額でどれだけの年金を受け取ることができるかの割合を示す「所得代替率」は現在の61・7%から50・8%に下がる。政府は「代替率50%維持」を掲げ、制度は持続可能としている。

 だが、給付水準の目減りは老後生活に大きく影響する。とりわけ低年金で暮らす人の生活を直撃するのは必至、弱者保護の対策が欠かせない。

 財政検証は将来の若者と人口比率がどう変わるか、女性や労働参加の進み具合、経済成長の見通しなどを踏まえ、約100年間の公的年金の財政状況や給付水準がどうなるかを試算している。5年に1度検証し、少子高齢化問題などに直面する年金制度の「健康診断」とされる。

 公的年金は現役世代の納める保険料と税金が主な財源で、現役世代から高齢者へ「仕送り」する仕組みだ。このため支える側と支えられる側の人口比率や経済状況を受けた賃金水準の変化が年金の財政、給付に影響する。

 検証では他に(1)会社員らが入る厚生年金の適用対象の拡大(2)働いて一定収入がある人の年金を減額する「在職老齢年金制度」の廃止・縮小(3)受給開始の選択幅を75歳まで拡大-などを実施した場合の影響を見る「オプション試算」も出した。保険料を払う支え手を増やし、年金額を確保する狙いを示している。

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 急速な少子高齢化の進行で現役世代は減り、年金を受け取る高齢者は増える。年金制度を維持するために政府が導入したのが「マクロ経済スライド」。賃金や物価の伸びより抑制するため、給付水準は目減りしていく。

 モデル世帯の夫婦2人の厚生年金は2019年度は22万円だが、検証結果では47年度に24万円となった。額面上は増えるが、物価や賃金の上昇で所得代替率は下がる。国民年金は、19年度は13万円だが、47年度は12万4千円に減る。自営業や短時間労働者など国民年金のみ受給する人は大きな影響が出る。

 政府は財政検証を基に9月から制度の安定化や低年金者の対策など改革論議を本格化させ、来年度の通常国会に改正法案を提出する予定だ。

 年金制度の維持と高齢者が安心して暮らせる給付額のバランスをどうとるか-が問われる。

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 県内の高齢者の現状は厳しい。2017年度の月平均給付額は厚生年金で12万5338円。国民年金は月5万2134円で47都道府県の中で最低になっている。全国で最も所得が低く、貧困率も全国一高い。非正規労働者が多い労働環境を考えると、今後の目減りの影響は深刻だ。

 老後に2千万円の蓄えが必要とした「老後2千万円問題」で年金制度への不安が広がった。政治の出番である。年金制度をどう持続可能なものにするか、与野党とも知恵を出して議論すべきだ。