受験生の不安は高まるばかりではないだろうか。

 現在の高校2年生から始まる大学入学共通テストに導入される英語の民間試験について、全国の国公私立大の3割が活用するかどうか決めていないことが文部科学省の調査でわかった。

 民間試験まで7カ月となる中であまりにも遅すぎる。

 琉球大は医学科が出願資格として活用し、それ以外の学科は共通テストの成績に加点する方針だ。

 受験生は来年4~12月に「英検」や「GTEC」など6団体7種類の民間試験から最大2回受験する。その結果を大学入試センターを経由し出願先に提供する仕組みだ。

 文科省は「大学入試英語ポータルサイト」を開設。民間試験の実施方法などが掲載されているが、日程や試験会場の詳細が示されていないなどの遅れが目立つ。

 全国高等学校長協会は今年7月「まったく先が見通せないほどの混乱状況になっている」として、文科省に不安解消を求める異例の要望書を提出した。(1)希望する時期や場所で試験を受けられる見通しが立っていない(2)地域・経済格差への対応が不十分(3)試験の詳細が明確でなく、指導計画が立てられない(4)公平、公正に対する不信が解消されていない-など多岐にわたる。

 調査とサイト開設はこうした声を踏まえたものだが、民間試験の情報がすべて確定しているわけではなく、受験生は選択することができない。

 試験申し込みは早くて今年9月から始まることを考えると、学校長協会の不安は何も解消されていないのである。

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 英語の民間試験は、従来の「読む・聞く」に、「話す・書く」を加えた「4技能」を評価するものだ。

 だが、7種類の民間試験はそれぞれ目的が違う。日常生活から仕事まで幅広く使える英語力を判断したり、留学希望者向けだったりするなど出題形式や出題傾向が異なる。

 文科省は各試験の成績が語学力の国際標準規格「CEFR(セファール)」の6段階評価のどれに当たるかを示した対照表で確認するというが、目的の違う7種類の成績を横並びで比較することができるのだろうか。

 英語が専門の大学教授らは民間試験の利用中止を訴え、約8千人分の署名を国会と文科省に提出。羽藤由美京都工芸繊維大教授はCEFRについて「異なる試験を比較できるという科学的、学術的根拠はない」と批判した。

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 学校長協会が懸念するように、1回の受験料も試験によって約4倍の開きがある。会場が大都市にしかなく沖縄では受験できない試験もある。経済的に苦しい家庭や離島など交通の便が悪い地域の受験生が不利益を受けかねない。

 問題作成から試験、採点まで民間事業者に委ねるため、アルバイトが採点に当たることが想定され、情報漏えいへの危惧も残る。

 学校長協会の会合では「不安が解消できなければ、体制が整うまでは実施を見送るべきだ」との声も多く出たという。文科省は受験生の不安解消に全力を挙げるべきだ。