甲子園で興南高校が春夏連覇に向け活躍していた9年前の夏、取材で沖縄少年院に通っていた。多くの声援を受けて夢を追う球児と、窃盗や暴走行為を繰り返してきた同世代の姿に複雑な気持ちになった

▼「育ち直り」の場所でもある少年院では、生活習慣を一から指導する。入所まで歯の磨き方やお箸の持ち方を知らなかった子も。大人が目を向ければ、本来入所するはずのない少年も多かった

▼先月あった意見発表会で、児童養護施設に預けられた経験のある少年は「親に捨てられたと思った。寂しさを紛らわすためだった」と非行の理由を語っていた

▼昨年の県内少年の検挙・補導人数は1万2544人で、共犯率と再犯率が全国平均より高い。親の離婚や困窮などを背景に、家庭や地域で行き場を失い非行に走るケースも少なくない

▼元法務教官で「日本こどもみらい支援機構」代表の武藤杜夫さんは「自らの存在を必要とされないのが、人間にとって一番つらい時」と指摘。「人生はどのタイミングで誰と出会うかで決まる。人生が変わる瞬間は、どこに行くかではなく、誰と行くかだ」とも語る

▼少年院を2度経験した若者は、「人は絶対に変われる」と書かれた恩師の手紙が更生のきっかけだったという。孤独や生きづらさの中でも、信じて支えてくれる人がきっといるはずだ。(吉川毅)