社説

社説[宮古島市が市民を逆提訴へ]「言論封じ」を危惧する

2019年8月30日 07:30

 宮古島市の不法投棄ごみ撤去事業は違法だとし、市民らが公金の返還を求めた住民訴訟に関連して、今度は市が市民らを訴える方針を明らかにした。

 住民訴訟で市の勝訴が確定しているにもかかわらず、名誉を毀損(きそん)されたとして提訴に踏み切るというのはどういうことなのか。

 市は提訴の理由を、訴訟で市民側が「事業費が違法に高額で、違法な契約を締結し、違法な支出を阻止すべき指揮監督義務を怠ったと虚偽の主張をした」ことなどを挙げ、市の名誉が傷つけられたとしている。

 下地敏彦市長は市が適正な処理をしたことを市民に知ってもらい、市の名誉を回復したいと話している。

 ただ、何を根拠にどういう名誉毀損があったかなどについて詳細な説明はなされていない。裁判で違法性に言及したり、反対の意見を主張することは当然のことである。そもそも住民訴訟では市の違法性がないとの判決が出ている。ここで名誉は回復されたのではないか。

 新たに市民を提訴することは、行政をチェックする側の意見や批判的な発言を封じ込めることになりかねない。抗議活動や運動などを萎縮させることにもつながる。

 市側は損害賠償額について、裁判でかかった弁護士費用や旅費、名誉毀損に対する賠償額、今後の訴訟の費用を根拠に1100万円を請求するとしている。

 行政側が住民をむやみに訴える公権力の乱用が危惧される。

    ■    ■

 市が2014年度に実施した不法投棄ごみの撤去事業を巡る訴訟は、市民らの住民監査請求が認められなかったことに始まる。

 市内に住む男女6人が16年、3カ所にあったごみを全て撤去する契約だったにもかかわらず、市がごみの総量を把握せずに高額な契約を結んだなどとして訴訟を起こした。

 18年3月の那覇地裁判決は、市が業者と結んだ契約について「違法とはいえない」として市民側が敗訴。市民側は控訴したが、同年12月に福岡高裁那覇支部は「市に違法性はない」と退けた。最高裁も上告を棄却している。

 訴訟とは別に、不法投棄ごみ計量票の写しを改ざんし、市議会に提出したとして虚偽有印公文書作成・同行使の罪で市職員が有罪になった。

 違法性は認められないとする司法判断の一方で、事業のずさんさも明らかになった。

    ■    ■

 近年、政府機関や大企業が、言論などを封じ込めることを目的に提訴する「スラップ訴訟」が相次いでいる。

 政治・社会的に重要な問題に、批判的な意見や異議を唱える人々を訴えるケースで、「恫喝(どうかつ)裁判」ともいわれる。アメリカでは1980年代に社会問題化し、被害を防ぐ法律ができた。日本にはない。

 スラップ訴訟といわれた東村高江のヘリパッド建設を巡る訴訟は、国が工事に反対する市民を通行妨害で訴えた。

 行政に不都合な言動を抑え込む風潮は民主主義の危機といえる。

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