県内の3市立図書館が裁判所の令状のないまま警察に利用者の住所、氏名、生年月日、貸出冊数などの個人情報を提供していたことが沖縄タイムスの調べでわかった。

 県内にある公立や大学など63図書館にアンケートを送付。今後、書名や氏名が書かれた貸出帳簿を提供すると回答した図書館もあった。

 刑事訴訟法は捜査当局が官公庁や企業などに捜査上必要な事項の報告を求めることができると規定。「捜査関係事項照会」と呼ばれ、内部手続きだけで出すことができる任意の位置づけである。

 利用者情報を提供していたのは糸満市立中央図書館、名護市立中央図書館、那覇市立中央図書館の3館。

 糸満市は「(特定人物の)利用者カード発行の有無と貸出冊数」、名護市は「(特定人物の)カード利用状況の有無を調べて回答したが、その人物はすでに抹消されていた」、那覇市は「特定期間の本の借用者と返却者住所、氏名、生年月日」を提供した。

 那覇市は警察から「小学生につきまとい行為をしている不審者が図書館を利用している可能性がある」といわれ、応じた。「今後は令状を基本としたい」と言っている。

 3館はプライバシーとして保護しなければならない個人情報について、なぜ必要なのか、どう利用するのか、実際どのように使われたのかを警察に確認したのだろうか。

 図書館が令状に基づかず利用者のプライバシー情報を警察に提供することは、憲法で保障された思想・信条の自由を脅かしかねない。取り扱いには慎重さが求められる。

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 国立国会図書館は令状なしの利用履歴の提供に応じたことはないという。今年1月の衆院法務委員会で同図書館総務部長は「資料名等の利用履歴は利用者の思想信条を推知し得るものであり、その取り扱いには特に配慮を要する」と答弁している。

 全国の図書館でつくる日本図書館協会は1954年に国民の知る権利や思想・信条の自由を守る「図書館の自由に関する宣言」を採択。79年に「利用者の秘密を守る」との新項目を盛り込んだ。令状なしでは、読書記録や図書館利用に関してプライバシーを侵さないとうたっている。

 ホームページでは令状主義の徹底を呼び掛け、照会に応じる要件として「その(令状を得る)余裕がなく」「他に代替方法がなく」「人の生命、財産等の危険が明白に認められる場合」に限定されるべきだと縛りをかけている。

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 宣言は戦前戦中、図書館が思想調査をする特高警察に協力し、利用者情報を提供していた反省に基づいている。

 米軍統治下の沖縄でも琉米文化会館などで、米軍が図書の貸し出し記録を調査していたといわれる。現在も米軍基地建設問題を巡って国側は抗議行動に参加する人の個人情報を収集しているとされるからなおさら懸念が募る。

 照会への対応基準が「ない」や「無回答」の図書館が約3割ある。裁判所から令状を取った捜査に応じることを大前提に、ガイドラインづくりを急ぐ必要がある。