沖縄料理・カラオケバー経営 今井寛大さん(27)=埼玉県朝霞市出身

 会員制の隠れた名店の多い東京・西麻布。その一角で、オリオンビールのちょうちんが軒先で揺れる。おしゃれな雰囲気の中に、沖縄ムードが漂う店を構えて4カ月。「人と人がつながる店づくりをしたい。少しずつ思いが形になりつつある」。徐々に手応えを感じながら模索する日々だ。

「人と人がつながる店にしたい」と語る今井寛大さん=東京・西麻布

 学生時代は、将来を嘱望されるサッカー選手だった。名門高校に特待生で入り、俊足のフォワード(FW)として活躍。自身もプロを目指していた。

 小学2年の時、初めて試合でゴールを決めた場面が忘れられない。親や仲間が歓喜し、もみくちゃにされた。「やったね」「おめでとう」。一体感がうれしかった。あれが、人がつながる心地よさを感じた原体験だったように思う。

 高2の夏、病を患い、ドクターストップがかかる。入院を余儀なくされ、突然夢が絶たれた失意の底で、励まされたのが歌だった。

 退院後、音楽会社の歌手オーディションに挑み、見事合格。ネットで自曲が配信された。しかし、音楽界の競争は激しく、メジャーデビューの夢はかなわず。アルバイトをしながらライブハウスの舞台に立った。

 その頃、食べていくために勤めた飲食店やホテルでの接客経験は、今の経営の礎になっている。

 母は、約20年前に埼玉県でIT会社を立ち上げ、関東沖縄IT協議会会長を務める恒子さん(61)=石垣市出身。一度だけ、母の会社で働けないか尋ねたことがある。「甘えるんじゃない」。返ってきた言葉は厳しかった。

 何とか入社が許され、平社員として連日飛び込み営業へ。いくつか契約も取れたが、悔しい思いもした。「いずれ社長になるんでしょ」「2代目はいいよね」。一人前として認めてもらえなかった。「自分の力で独り立ちしたい」。飲食店を開く動機となった。

 店構えをどうするか。生まれは埼玉でも、ルーツは沖縄にある。敷居が高そうな店が並ぶ西麻布で、「沖縄」をキーワードに親しみやすさを売りにすると決めた。「不安だらけだけど、やるしかない」。サッカー現役時代の俊足をほうふつとさせるように、物件を3月に選び、5月には開店にこぎ着ける。

 店名の「a.GOOD(ア・グッド)」は、来店客が「良かった」と思ってもらえるようにとの願いを込め、琉球在来豚アグーとも掛けた。「人のつながりをどれだけ大事にできるか。やればできることを示したい」。経営という名の勝負はまだ始まったばかりだ。(東京報道部・西江昭吾)=連載アクロス沖縄(116)

 いまい・かんた 1992年、埼玉県朝霞市生まれ。西武台高卒。高校時代、音楽会社エイベックスの歌手オーディションに合格。自曲「ウィズ・ユー」がネット配信された。5人の合格者にはデビュー前のきゃりーぱみゅぱみゅさんもいた。同級生の荒井祥浩さんと経営する店の住所は東京都港区西麻布1の4の41、麻布ファーストビル3階。電話03(6434)5314。