「おいしい生活」というコピーをご記憶だろうか。西武百貨店が1982年に使い、注目された。高級ブランド服を買い、生活を豊かにする消費行動を「おいしい」と表現する手法が斬新だった

▼作者はコピーライターの糸井重里さん。2011年に「日本のコピーベスト500」で、歴代1位に選ばれた。県立博物館・美術館で8日まで公開のジブリ大博覧会は、糸井さんのコピーが何度もダメ出しされる迫真の書簡も展示している

▼相手はプロデューサーの鈴木敏夫さん。特に激しかった「もののけ姫」では、1996年3月から7月に21個もの案をボツにした。鈴木さんは何度も再考をうながし「ポスター、予告編を全てストップして待ちます」と迫る

▼さすがの糸井さんも「袋小路に迷い込んだ」「もののけノイローゼ」と弱音を吐く。魂から絞り出すように「生きろ。」ができた。鈴木さんは「すごく良い」と絶賛。「3文字に時代性が込められている」と評した。前年の阪神大震災、オウム事件を重ねたのだろう

▼鈴木さんはNHK番組で「自分を信じない。人を信じる」と語っている。達人同士が妥協を許さずぶつかり合う貴重な書簡から、プロの流儀が見える

▼「生きろ。」を見た宮崎駿監督は「近い!」と言ったという。すんなり了承しないところが面白い。これも巨匠の流儀だろうか。(吉田央)