働く高齢者の労働災害(労災)が増えている。

 県内で2018年に発生した休業4日以上の労災のうち、4人に1人が60歳以上のシニア世代だった。この10年で件数は約3倍となった。「生涯現役社会」の掛け声とは裏腹に、高齢者が安心して働ける職場づくりは、遅れている。

 60歳以上の労働者は、18年は全国では2割近くを占める。県内もこの10年で約5万人増加。割合は13・7%に上っている。

 沖縄労働局によると、労災に占める60歳以上の割合は25・3%(全国26・1%)で、目立って多くなっている。

 労災増加の背景には、働くシニア世代の増加がある。高年齢者雇用安定法改正による定年後の65歳までの継続雇用制度化のほか、人手不足が拍車をかける。

 年齢とともに低下する視力や握力、バランス保持能力といった身体機能も無関係ではない。さらに持病を抱えている人も多く、若い世代と比べると労災が発生するリスクは高い。

 県内では、60歳以上の労災の3分の2以上が、観光業や飲食業といった第3次産業で発生。建設業や製造業でも多いという。

 清掃時に水や油でぬれた床で滑った、階段を踏み外すといった転倒が全年齢では27・9%だが、60歳以上になると47・5%と半数近くを占める。

 重い荷物を抱え、足元が見えない状態で階段を踏み外すなど、作業方法や時間に追われたことが原因とみられるケースも相次いでいる。

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 労働力不足解消を目指す政府は、希望者が70歳まで働く機会を確保することを企業の努力義務とする方針を示している。高年齢者雇用安定法の改正案を20年の通常国会に提出する方針だ。

 現実には70歳を超えても働き続ける人は増えている。

 「2018年版 高齢社会白書」によれば、65~69歳で半数近くが働き、70~74歳でも約3割、75歳以上で働く人も1割近くいる。

 「生きがい」や社会との関わりを求める高齢者がいる一方で、年金の受給開始年齢引き上げや低年金など生活のために、働き続けざるを得ない高齢者も多い。

 安倍政権は「1億総活躍社会」や「生涯現役社会」を掲げる。高齢者の雇用に対して企業に助成金を拡充するなど働く場の拡大に力を注ぐが、職場環境の改善も両輪として進めるべきだ。

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 身体機能が低下した高齢者でも健康に配慮し、安全に働くことができる職場環境を整えることは、待ったなしの課題だ。

 沖縄労働局では、転倒労災防止に向け企業への説明会を開催。職場の段差解消や照度の確保、危険箇所の表示、さらにチェックリストの配布などし、注意を呼び掛けている。

 ただ、罰則規定がないため、実質的な対策は「事業者に委ねられているのが現状」だ。

 企業には実情に合った安全対策の実施、国には職場環境の改善に指導力を発揮してほしい。