どこかで見たような光景だと思った。選挙で語った考えを変えた首長が記者会見で矢面に立ち、住民の突き上げを食らう。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を表明した横浜市の林文子市長のことだ

▼2年前の市長選で「白紙」だったが、8月下旬に「誘致」へかじを切った。「(誘致を)やめるとは全く言っていない。(市民を)裏切ったという気持ちはない」。6年前、名護市辺野古埋め立てを認めた仲井真弘多知事(当時)とダブる

▼その時々で方針転換を迫られる場合はあるだろう。ただ、街の将来を方向づける政策なら、住民の信を問う手続きは欠かせない

▼林市長は財政難を乗り越えるにはIRが必要と言う。IR整備法は、カジノ収益の30%を国が納付金として徴収し、立地自治体と折半する仕組みを定めるが、皮算用通りに事は運ぶか

▼経済効果への期待の半面、ギャンブル依存症や治安悪化への懸念は根強い。建設候補地の山下ふ頭を利用する物流業者でつくる横浜港運協会の会長で“ハマのドン”と呼ばれる藤木幸夫会長(89)も「将来のためにも、ばくち場にしない」と反対する

▼ふ頭の土地約47ヘクタールの9割超は実は市有地。最後は地主の意向で押し切る算段ではなかろう。民主的手続きで理解を得ずに進めると、どうなるか。今の辺野古をみれば分かる。(西江昭吾)