衣食住に困らなくなり、書店には“いかにして才能豊かな子どもに育てるか”というような指南書本が立ち並ぶ。参考にはなるが、決して同じようにはならないのが世の常だ。

「トールキン 旅のはじまり」

 トールキンは幼くして父親を亡くし、母と弟の3人で、美しい自然に囲まれた英国で貧しいながらも、母の愛に包まれて暮らす。その母も12歳の頃に失うが、彼女が息子たちに語った物語の数々は、後のトールキンの想像の翼を大きく広げる手伝いとなる。

 死期を悟った母親が、丁寧に伝えた生きることの美しさ、想像することの豊かさは、苦しい時間さえも糧とする。何かに抑圧されながら生きる少年たちのまっすぐなまなざしと、希望と絶望のはざまから繰り出す、ちいさな抵抗のパンチが心地よく落ちていくのを感じながら、愛された記憶は最強だと再認識する。(スターシアターズ・榮慶子)

シネマパレットで上映中