京都アニメーションが手掛けた映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-」を見た。35人が犠牲になった放火殺人事件の前日に完成した作品で、新作公開は事件後初となる

▼戦争で両腕を失い、義手になった元少女兵が手紙の代筆を通して人の心に触れる物語。手紙のやりとりというシンプルな展開の中で紡がれる繊細な心情描写、圧倒的な映像美に引き込まれた。作り手の熱量が伝わってくる

▼犠牲者の一人でアニメーターの石田敦志さん(31)は、絵を自然に美しく動かすことにこだわっていたという。父基志さん(66)は8月末の会見で「決して『35分の1』ではない。ちゃんと名前があって頑張っていた。どうか忘れないで」と訴えた

▼全犠牲者を含め制作に関わった全てのスタッフ名が流れたエンドロール。目で追いながら考えた。一人一人はどんな人生を歩み、作品にどんな思いを込めたのか、志半ばで将来を絶たれた無念さはいかばかりか

▼事件の実名報道を巡り、身元公表を拒む遺族もいた。遺族の心情をくみながら、ひとくくりにできない個々の生きた証しを伝えていかなければと思う

▼映画のクライマックス、別々に暮らす“姉妹”が絆を確かめるように名前を呼ぶ場面がある。名前の重みを考えた90分。県内はサザンプレックスで上映中。(大門雅子)