宮古島市の不法投棄ごみ撤去事業を巡り、市が住民訴訟を起こした市民6人に名誉を毀損(きそん)されたとして損害賠償訴訟を起こす考えを示している問題で、提訴のため市議会に提案した議案書に、原告が「宮古島市長 下地敏彦」と記載されている。識者は「法人の市が名誉を毀損されたと主張するなら、原告は市となるはずで議案書の体を成していない」と指摘。仮に同議案が市議会で可決されても「地方自治法96条で定めた議会の議決を経たことにならず無効だ」としている。(社会部・伊集竜太郎)

原告が「宮古島市長 下地敏彦」と個人名となっている市の議案書

◆「原告が市でなく市長名」

 指摘するのは、九州大名誉教授(行政法)の木佐茂男弁護士。木佐弁護士は、同議案が可決されて訴訟になっても「市民側は無効を主張すれば、市の訴訟提起自体が不適法として却下されるだろう」と話した。

 市の顧問弁護士は本紙取材に、「原告はあくまで市であり、市の代表者として市長名を明記した。それが誤解を与えるというのであれば、誤解を与えないように修正して、議案の中身について議会で審議してもらいたい」と話した。

◆異なる名誉毀損の要件

 一方、議案書では民法723条の引用として「公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損した者」と記載しているが、実際は刑法230条を引用していた。市側は議会で「必ずしも723条そっくりそのまま(の引用)ではない」と釈明した。

 木佐弁護士は刑法と民法の名誉毀損の要件は異なり、「それを混同しているのはとんでもないミスで、明らかに検討不足だ」と指摘。原告や民法の表記については、市議会で指摘が相次いでいる。

 今回の市の訴訟方針について、木佐弁護士は「市の名誉とは市民全体を指す。全市民を愚弄(ぐろう)するような表現が使われている場合なら、公法人として提訴することもありうるだろう」とした。

 その上で、住民訴訟での原告の批判は市長や市幹部ら事業の責任を問われる人だけであり、「それを市への名誉毀損と主張すること自体、飛躍が過ぎる」と強調。住民訴訟は、市民が「より良い自治」を実現するために訴えたものであり、「その権利を侵害するものだ」と話している。