10代から、自分の名前をローマ字で書く時は「名-姓」だった。何十年も続けた習慣を、急に変えられると違和感がある。政府が、名前のローマ字表記を「姓-名」に統一する方針だ

▼ローマ字の構成は、英語のアルファベット。英語圏の表記に合わせるのが筋と思いきや、柴山昌彦文部科学相は「日本の伝統に則した形にするのがいい」。読む側より、読ませる側の事情を優先するようだ

▼表記の変更は、2000年に国語審議会が出した答申がきっかけ。19年も前の話を、なぜ今か。河野太郎外相は「令和という新しい時代」になったと理由を述べている。そう言えば元号を巡り、外務省にもドタバタがあった

▼改元を機に、省内の文書を西暦で統一する方針だと、4月に報じられた。自民議員はこう反発し、元号の併記を求めた。「外国に合わせるのが仕事ではなく、自国を守って文化を伝えるのも仕事だ」。仕事相手より、国内事情が大事らしい

▼ビジネスの世界で、取引先に「それはあなたの都合でしょ」と言われると、返す言葉がない。面会の日時や取引条件。相手の事情を優先し、仕事の運びを考える。政治は勝手が違うようだ

▼自国の伝統も大切だろうが、思考が内向き過ぎないか。国はローマ字表記の変更を「推奨」する方針。浸透しないと法で「強制」するのだろうか。(吉田央)