こうなることは、県民なら容易に想像できた。国の主権の根幹と言っていい警察権が骨抜きにされる。本来あってはならないことが、ここ沖縄では何度も繰り返されてきた

▼3年前、名護市の海岸に米軍の輸送機オスプレイが墜落した事故を捜査していた中城海上保安部は、操縦していた機長を特定できないまま、氏名不詳で航空危険行為処罰法違反の疑いで書類送検した

▼誰か分からなければ裁判にかけられるはずがない。早晩、不起訴という結末を迎えるだろう。では、この機長はおとがめなしなのか。そうはならない。あくまで日本の国内法で裁かれないだけだ

▼そもそも事故機は米軍の訓練中で、いわゆる「公務中」。日米地位協定の取り決めで優先的な刑事裁判権は米国側が握る。墜落という重大事故を起こしたのなら、軍法会議へ訴追されるはず。そう考えるのが自然だが、それがどうも疑わしい

▼米軍の内部情報が明らかになることはめったにないが、例えば2008~11年に日本人の被害者が死亡または全治4週間以上の重傷を負った米軍人の公務中犯罪31件で、軍法会議への訴追は1件もない。懲戒処分は受けたが、内容は不明

▼これは身内に甘い温情裁決ではないのか。そうではないと言うなら、せめて機長が刑事罰を受けたのか否か、つまびらかにすべきだろう。(西江昭吾)