安倍晋三首相とトランプ大統領が26日、米国産の牛、豚肉を環太平洋連携協定(TPP)水準まで関税を引き下げる貿易協定に最終合意したことを受け、県内の畜産業界には安価な輸入肉の増加で競争がさらに激化する懸念が広がる。養豚業界は「牛肉が豚肉のシェアを奪うのではないか」と県内の畜産業界内の競合を恐れる。一方、飲食店からは「味が濃厚で脂身が少ない米国産牛肉をお客さんに安価で提供できる」と合意を歓迎する動きもある。(政経部・津波愛乃)

豚肉(©OCVB)

 TPPと欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効以降、参加国から牛肉や豚肉の輸入量が増えている。安価な海外産と県産の競争が激化する中、今回の合意で、米国産が新たな競争相手として加わる形となった。零細農家が多く、スケールメリットに乏しい県内の畜産農家には大きな痛手だ。

 那覇市の食肉卸業者は「(TPPで)豚肉の関税は既に大きく引き下げられ、安価な海外産が多く流通している。ただ、牛肉は段階的な引き下げで今後、さらに安価なものが増える。消費者のニーズが豚肉から牛肉に流れるのではないか」と不安視する。

 販売の価格競争が起きている一方で、飼料代が高止まりしている現状を踏まえ、生産農家からは生産力向上に向けた手厚い支援策を国に求める声も。

 県養豚振興協議会の稲嶺盛三事務局長兼会長は「優良種豚を県外から導入し、年間出荷頭数を上げるなど努力も必要だが、輸入肉への対抗には、農家の力だけでは限界がある」とし、国に安心して生産に取り組める補助金の充実などを訴えた。

 JA沖縄中央会の大城勉会長は「輸入動向や価格を注視し、政府に万全な国内対策を求める」とコメントを発表した。県農林水産部は「生産農家の懸念の払拭(ふっしょく)に向け、国に対して説明を求め、動向を見ながら適切に対応したい」と話した。

 今回の合意を前向きに捉える声も上がる。老舗のステーキ店の担当者は「アメリカ産が他国産よりも安くなるなら、ぜひ使いたい」と話した。

 もとぶ牛の生産からレストランなどの店舗展開を手掛けるもとぶ牧場(本部町)の坂口泰司社長は、米国側も日本産に対し、関税を引き下げることを踏まえ「自社レストランにインバウンドの集客を増やす。海外輸出にも力を入れたい」と意気込んだ。

 一方、県内には海外輸出するための肉用牛の食肉処理施設がないとし「県産牛の海外輸出強化には、輸出に対応した施設整備ができるかが鍵になる」と話した。