30年前、3%の税率で消費税が導入される前夜の様子を、本紙は「新税にささやかな抵抗」との見出しでこう報じている。

 「街には値上がり前の商品を求める買い物客があふれ、スーパーにはまとめ買いをする人たちが殺到し、まるで中元、歳暮なみの込みようだった」

 5%、8%の引き上げをへて、きょうから消費税の税率が10%にアップした。

 この週末、各地の小売店では駆け込み購入がピークを迎えたが、これまでに比べ動きは鈍かった。窮余の策ではどうにもならないほど、「2桁」の負担は家計に重くのしかかる。

 消費税は国民全体で広く負担を分かち合い、安定した歳入を期待できるとして1989年にスタートした。

 8%から10%への引き上げで見込まれる増収は5兆7千億円。単純計算で年間の消費税収は20兆円を超え、国の税収の約3割を占める最大税目となる。

 所得税、法人税とともに基幹3税として増大する社会保障費や国の借金を賄う一方、逆進性の高さが低所得者の「痛税感」を強めている。

 今回、政府は増税による負担を少なくするため、初めて食料品などへの軽減税率、キャッシュレス決済のポイント還元を実施した。

 しかし実際には支出の多い高所得者ほど軽減税率の恩恵を受けやすいという側面がある。ポイント還元も高齢者に多い「デジタル弱者」には恩恵が薄く不公平感が拭えない。

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 負担は消費税だけにとどまらない。痛みを伴う動きは社会保障の分野でも進みつつある。

 年金については、既に受給開始年齢の70歳以降への選択肢拡大が高齢社会対策大綱で打ち出されている。

 医療では、後期高齢者の窓口負担を、現在の原則1割から2割に引き上げることが課題となっている。

 介護についても、財務相の諮問機関が、サービス利用者の負担を1割から2割に上げることを求めている。

 消費増税にあわせた家計支援として、政府は低所得の高齢者に月最大5千円を支給する「年金生活者支援給付金」をアピールするが、対象は年金収入などが年約78万円以下の人に限られている。

 買い物のたびに支払う消費税は、じわじわと暮らしを圧迫する。家計が苦しい人ほど影響は深刻だ。これで楽になるとは思えない。

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 「2桁時代」に入り、消費税の存在感はますます高まるだろう。

 だがそれとは別に所得税、法人税などを合わせても、100兆円を超える歳出の約6割しかカバーできない現実がある。

 増税後も、世界で最悪水準とされる財政の健全化の課題は残されたままだ。

 歳出の無駄を削減することは当然である。内部留保をためこむ大企業や富裕層などへの課税強化にも切り込むべきだ。

 所得再分配機能の強化を求めたい。