労働集約型の企業が沖縄に進出してきて、経営者が異口同音に言う最大の魅力に「賃金を低く抑えられることですね」がある

 ▼首都圏などと物価や最低賃金を比べて給料を低く設定するのは、企業経営からすれば理にかなっているかもしれないが、面と向かって何度も聞かされると面白くはない。どこか「沖縄の労働の価値はこれぐらい」というニュアンスをかぎ取ってしまうからだ

 ▼コールセンターの中には最初から、低賃金と、若者を雇うと会社が公的助成を受けられる奨励金目当てに、人を使い捨てるように進出したところもある。2年半で社員数の3倍、バイトは5倍入れ替わったとなれば、疑いのないブラック企業だろう

 ▼厚生労働省は残業代不払いなどの違法行為を繰り返すブラック企業の新卒求人を、ハローワークで受理しない制度を創設する方針という。若者向け雇用対策法案の柱になる

 ▼受理しないのは残業代を支払わない企業や、育児休業を取得させないなどで企業名が公表された場合を想定している。ハードルは高く、民間の職業紹介は規制対象外だが、ブラック企業の入り口を絞る対策には違いない

 ▼非正規雇用の割合が全国一高い沖縄では、劣悪な雇用環境に入ると悪循環から抜け出せないという指摘もある。雇用の質改善に向けた新制度になることを切に願う。(与那嶺一枝)