沖縄県と鹿児島県にわたる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録について、国際自然保護連合(IUCN)による現地調査が5日から始まる。

 同地域の調査は2017年以来2度目。18年5月にIUCNが課題を挙げて登録延期を勧告し、今年2月に国が同地域の登録を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に再申請してからは初の現地調査となる。

 一度は申請を取り下げた世界遺産登録へ向け、再び本格的な審査がスタートする。登録実現にはIUCNが前回提示した課題に真摯(しんし)に取り組む姿勢が必要だ。

 最大の課題は「推薦区域の見直し」といわれている。自然環境保護の観点から登録地には「完全性・一貫性・連続性」が必要とされるが、当初、同地域は24カ所にも及ぶ飛び地で構成されていたり、沖縄島では北部訓練場返還地の重要な地域が含まれていなかったりすることがネックとなっていた。

 これに対し環境省などは、境界の修正などで推薦地の構成要素を五つに絞り、北部訓練場返還地をやんばる国立公園に編入することで対応したとする。しかし十分とはいえない。特に返還地では9月に入り、米軍のものとみられる大量の空包や薬きょうが相次いで見つかっている。

 長年米軍の訓練場として使用されてきた返還地では、これまでも土壌から有毒性の物質が検出されるなど地元住民や自然保護の専門家らが汚染を問題視してきた。だが政府はユネスコに提出した推薦書で「土壌汚染や水質汚濁がない」と述べるなど、この問題に目をつむる態度をとっており疑問だ。

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 2度目の現地調査を前に、県内外の自然保護団体は返還地の登録に関して相次いで要望書を提出している。登録を通じて自然環境の保全が進むことを要望するこれらの意見に対しIUCNからは「提供いただいた情報を現地調査の評価担当者に届ける」旨の返答があったという。

 過半が返還された北部訓練場だが、未返還地はまだ半分残る。やんばる地域と隣接した場所でオスプレイの離着陸など激しい軍事訓練が続いている。

 IUCNは前回調査で「日本政府と米国政府の間に必要な調整メカニズムを発展させる必要がある」として同返還地周辺の保全へ根本的な問題を指摘した。

 それを見れば、登録延期勧告は、基地に隣接する推薦地の保全に対する政府の見通しの甘さが招いた結果であったことは明らかだ。

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 世界自然遺産登録に向けては、地元自治体や経済界を巻き込んだ登録推進の機運が高まっている。琉球諸島の固有の自然環境を守りつなぐことが、持続可能な開発や地域社会の潤いに直結することを多くの県民が実感している証左だ。

 沖縄島に米軍基地が集中している以上、基地問題を棚上げしてはその理念も成し遂げられない。確実な登録に向けて、政府は抜本的な課題解決に取り組むべきだ。