テレビの討論番組で、竹中平蔵さんが「(同一労働・同一賃金の実現を目指すなら)正社員をなくしましょうって(中略)言わなきゃいけない」と発言したことが、ネット上で話題だ

 ▼竹中さんといえば、小泉構造改革で建設従事者を介護職へ誘導するなど雇用環境を変えた元経済財政担当大臣。ほぼ10年後の今、建設業は人手不足に陥り、家族を養うため「寿退社」するといわれる介護職は待遇の改善が課題だ

 ▼発言は議論の相手への挑発気味の問い掛けだが、生身の労働者に目を向けない竹中さんの考えが見え隠れする。沖縄では正社員になれずに非正規で働かざるを得ない「不本意非正規」の深刻さが浮き彫りになった

 ▼県内のハローワークで2013年度に正社員を希望して求職活動をした6万7千人余のうち、正社員で就職できたのはわずか11%。男女とも、全国より正社員の希望は多いのに、実際になれたのは逆に少なかった

 ▼背景には、正社員の求人が全体の28%にとどまったことに加え、労働条件など質に課題があって応募者がいないケースの多さがあるようだ

 ▼働くことは生活の基盤をつくり、生きがいへとつながる。経済がいまだ不安定な社会で、より安定した正社員の職を求める庶民の姿は今の日本の仕組みでは当然の帰結だ。「正社員なくせ」は絵空事でしかない。(与那嶺一枝)