「水兵リーベ僕の船」の語呂合わせでおなじみの元素周期表の3番目。「石」を意味するギリシャ語にちなんで名付けられた「リチウム」から生まれた研究成果が、最高の栄誉に輝いた

▼あらゆる電子機器に内蔵されているリチウムイオン電池を開発した吉野彰さん(71)にノーベル化学賞が贈られる。旭化成のサラリーマンをしながら世の中を変える価値を生み出した

▼10年前のインタビューが収められた本「仕事の話」(文芸春秋刊)でこう語っている。「学問の世界と違い、評価基準は、誰が最初に開発したかではない。(事業化の)権利と利益を誰が初めに確定させたか、です」

▼民間企業らしい実利重視の考え方。競合他社に入り込まれないよう、微細にわたり取得する特許戦略も興味深い。「面白いなと思うのは、のちのち巨大ビジネスになる分野ほど枝葉の特許が効いてくる」。リチウムイオン電池も、電池本来の機能とは別の特許によって自社事業が守られた

▼旭化成のサイトにこんな言葉が載っていた。「新しい発見はないかと真剣に考えている時より、暇でボヤッと考えている時に自然と(発想が)浮かんでくるんです」

▼ボーっと生きてんじゃねえよ、というテレビ番組の言い回しがはやる昨今。大きな成功をつかみ取るには、無駄なように見える時間も悪くない。(西江昭吾)