日本も批准する「子どもの権利条約」の理念を具体化するためにも、条例制定を進めるべきだ。

 玉城デニー知事が重要政策について有識者から意見を聞く「児童虐待に関する万国津梁会議」が、子どもの権利全般を保障する条例制定を促す意見案をまとめた。

 県が中心に据えたテーマは児童虐待防止だが、子どもを巡る問題は複雑化しており、より総合的な対策が必要だとの考えが示された。

 大筋で了承された意見案は「子どもの権利」「虐待の背景」「体罰の禁止」など八つの項目からなる。

 子どもの権利に関しては、条約にのっとって児童を保護の対象でなく権利を持つ主体としてとらえ、「子どもの権利を保障することは、大人および社会の責務」とする。

 沖縄の子どもの貧困率は2018年時点で25%と、4人に1人という高い水準にある。県内の児童相談所が18年度に対応した児童虐待は前年度比1・59倍の1100件で、全国で最も高い増加率となっている。17年度の県内の高校の不登校率、中退率は全国平均を大きく上回った。

 これら困難が発達段階におけるさまざまな機会を奪っているとしたら、意見案にあるように「子どもの権利の問題だという視点で、恒常的・総合的に取り組んでいく必要がある」。

 子どもの権利に関する条例は、01年に川崎市で施行されたのを皮切りに全国へと広がる。都道府県レベルでは長野県が制定。先進自治体の試みを参考にして具体的議論につなげてもらいたい。

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 体罰については「条例で親権者に限らず子どもと関わる全ての大人の体罰を禁止する」「子どもの品位、品格を傷つける行為も禁止する」と踏み込んだ。

 同時に「罰則規定など強権的な方法は控えるべきである」とし、体罰によらない子育て支援の必要性にも触れている。

 罰則を設けないことに実効性を問う声があるのは事実だ。しかしだめだといくら言っても、それ以外に「しつけ」の方法を知らないという親の問題を解決しなければ、根を絶つことはできない。

 生活困窮に暴力が絡むと家族の問題は複雑化する。苦しい状況にある人ほど自分からは声を上げることができない。

 提言にあった子のSOSをくみ取る仕組みや、子育てに悩む親が電話相談できる統一ダイヤルの設置など施策の充実が求められる。

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 玉城知事が県政運営の柱とする「誰一人取り残さない社会」を形にする政策の一つが児童虐待防止条例の制定である。

 だが虐待だけに絞った対策では、子どもを取り巻く昨今の問題にうまく対応できないのではないか。会議がまとめたように子どもの視点に立った施策を総合的に推進し、最善の利益を目指すべきだ。

 子どもの権利は、憲法や児童憲章にも規定されている。その権利を明確にし、「子に優しい県」という姿勢を打ち出す意義は大きい。