泥水の中に浮かんでいるように見える家々の屋根。どこまでが川で、どこからが住宅地なのか。言葉を失うような光景だ。

 東日本を襲った台風19号による記録的な大雨で、広い範囲で甚大な洪水被害が発生した。

 犠牲者は13日夜までに確認されただけで35人、行方不明も17人を数える。

 被害の全容は明らかになっていないが、とにかく今は全力で人命救助に当たってほしい。

 記録的な大雨は、台風が水温の高い海を進み、大量の水蒸気を供給し、巨大な雨雲を伴って北上したためという。

 数十年に1度とされる「大雨特別警報」は13都県に発表され、「避難指示」は9都県で93万人余に及んだ。

 神奈川県箱根町では12日の降水量が922・5ミリに達し国内最高記録を更新。その他の地域でも記録を塗り替えるような雨が降った。

 この猛烈な雨によって、21河川の24カ所で堤防が決壊した。決壊しなかった川でも、水が堤防を乗り越える氾濫が起きた。決壊の恐れが出たため、ダムの緊急放流も実施された。

 千曲川の堤防が約70メートルにわたり決壊した長野市では、大量の濁流が住宅地をのみ込んだ。一気に水かさが増し、自力で避難できなくなった住民も多かった。

 近くを流れる川が氾濫した埼玉県川越市の特別養護老人ホームでは、一時200人以上が孤立状態となった。

 冠水した道路で車が水没し、乗っていた人が流されたとの通報も相次いだ。

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 今回、気象庁は、台風上陸前に2回も記者会見を開き、過去に大きな被害が出た台風を示しながら、「命を守る対策を」と異例の呼び掛けを行った。

 都内では千カ所を超える避難所に8万人余りが身を寄せたといい、最大級の警戒呼び掛けが奏功したともいえる。

 だが一方で、河川の氾濫による広範囲の洪水被害は、これまで見られなかったものだ。

 昨年の西日本豪雨でも20以上の河川の堤防が決壊し、整備の遅れがクローズアップされた。長大な千曲川も堤防整備が追いついておらず、決壊した場所は「他より数十センチ低い所だった」という。

 数十年に1度がこれだけ頻発しているのだから、そもそもの基準の見直しを含め、堤防の強度を高める対策を急ぐべきである。

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 安倍晋三首相は非常災害対策本部の初会合で「避難者の生活に必要な物資を『プッシュ型』で支援してほしい」と述べ、被災地の求めを待たずに支援する考えを強調した。場所によっては浸水が長引く可能性もある。復旧事業を国が手厚く支援する激甚災害指定も急がなければならない。

 地球温暖化の影響で、今後、台風の規模は大きくなるといわれている。200人以上が死亡した西日本豪雨も、温暖化の影響で雨量が増えたためと分析されている。 

 温暖化によって気象災害のリスクが高まっているという危機感の共有も必要だ。