マジックペンのキャップを口でくわえ、画用紙にスラスラとペンを走らせる姿。似顔絵で被災地の支援活動を続けてきたイラストレーターの森琢磨さん=那覇市=が14日、亡くなった。46歳だった

▼東日本大震災の発生直後から月1度のペースで東北を訪ね、無償で描いてきた。熊本など各地の被災地にも足を運んだ。描いた似顔絵は1万人を超える

▼中学1年の息子を津波で亡くした宮城県の女性は、「森さんは魔法使い」と話していた。5年前、「一緒に写真が撮れなくても、絵の中なら一緒に描くことができる」と家族全員がそろった絵を贈った。それから交流が続き、昨年は「20歳になった息子の姿が見たい」とのリクエストにも応えた

▼描く似顔絵はみんな笑顔だ。携帯電話の待ち受け画面に残る娘の写真が唯一の形見という被災者も、津波でアルバムが流された高齢者も、似顔絵を見て泣きながら笑っていた

▼「ボランティアというより家族や友達に会う気持ち。人とのつながりの大切さを実感している」と語っていた森さん。今年2月にステージ4の肺がんが見つかり、病と闘いながら被災地を思っていた

▼森さんのフェイスブックには、似顔絵で元気をもらった人たちから「ありがとう」の言葉が並ぶ。被災した人の心に寄り添い、たくさんの人を笑顔にした魔法は消えない。(吉川毅)