社説

社説 [川村沖縄大使発言] 地位協定が捜査の壁だ

2019年10月18日 08:23

 米軍普天間飛行場所属MV22オスプレイが2016年12月、名護市安部の海岸に墜落し大破した事故を巡り、外務省沖縄事務所の川村裕沖縄大使が「日米地位協定が捜査の支障になったとは認識していない」と発言した。

 事故については県議会が、日本側が十分な捜査ができなかったとして日米地位協定の抜本的改定を求める意見書を全会一致で可決。議員らが意見書を携えて訪れた要請の場での発言である。事実誤認も甚だしく問題だ。

 捜査を巡っては中城海上保安部が複数回、当時の乗員への聴取を米軍に要請したが、米軍は応じなかった。証拠物の機体も米軍が回収したため触れられず、捜査は不十分な形で終結した。

 その結果、海保は、搭乗していた機長を氏名不詳のまま、航空危険行為処罰法違反容疑で那覇地検に書類送検した。事故は不起訴となる見通しで、顛末(てんまつ)を見れば地位協定が捜査の障害になったことは明らかだ。

 これに先立ち日本維新の会県総支部(下地幹郎代表)が川村大使と沖縄防衛局の田中利則局長に対して実施した、事故捜査に関する聞き取りに対しても川村大使は同様の認識を伝えていた。

 聞き取りでは沖縄事務所と沖縄防衛局が、米側に海保の捜査への協力要請をしていなかったことも分かった。

 米軍基地が集中する沖縄で、外務省や防衛省の出先機関として県内に事務所を構える両機関の対応としてふさわしくない。あまりに無責任と言わざるを得ない。

■    ■

 今国会で日米地位協定の見直しについて再三問われた安倍晋三首相は、今年7月の米軍機事故対応指針の改定の成果を強調し、従来通りの運用改善にとどめる方針を改めて示した。

 指針は04年に発生した沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故で、米側が地位協定を盾に、日本側の現場周辺立ち入りを認めなかった問題を機に策定されたもの。その後の改定では「日本側の内周規制線への迅速かつ早期の立ち入りが可能となる」とする文言が盛り込まれたが、事故現場への立ち入りに米側の同意が必要という根本的な課題は依然残っている。

 沖縄事務所などが「地位協定は支障でない」として米側に捜査協力を求めない姿勢のままでは、指針改定が形骸化する恐れもある。

 川村大使は認識を改め、発言を撤回すべきだ。

■    ■

 墜落事故の捜査はなぜ必要か。原因を追及して必要な措置を講じ、ふたたび同じ事故を起こさないようにするためにほかならない。

 米側は今回の事故原因を「人為的ミス」と結論づけている。しかし日本側では事故から3年がたとうとする現在も米側が対策を講じたか否かすら分かっていない。沖縄事務所など国側は「米側に安全の確保を求めていく」と通りいっぺんの回答をするが、これまでに具体策が提示されたことはほとんどない。

 繰り返される米軍機事故の背景に日米地位協定の不平等を認めない国の姿勢がある。

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