革新的なベンチャー企業の創出を目指す「オキナワ・スタートアップ・プログラム(OSP)」の募集が始まった。3期目となる2019年度は琉球銀行、沖縄タイムス社に加え、沖縄セルラー電話、沖縄電力、日本トランスオーシャン航空(JTA)の5社が主催。資金調達や、専門的なアドバイスなどの支援体制を拡充し、沖縄発のスタートアップを後押しする。応募締め切りは31日。

スタートアッププログラムの最終発表会「DemoDay」=2019年2月、恩納村・沖縄科学技術大学院大学(OIST)

採択へプレゼン 真剣勝負

 新しいビジネスを展開するベンチャー企業。その中でも、これまでにない斬新なビジネスモデルで、短期間で事業を一気に拡大させるベンチャーは「スタートアップ」と呼ばれ、経済活性化のけん引役としての期待が大きい。

 売り上げが生まれる前の創業当初からシステム開発や営業展開などに多額の費用をつぎ込み、それをバネに弾みをつけて急激な成長を遂げる。産業構造さえも変えるほどの可能性やスピードがある半面、資金や経営ノウハウに乏しいのがスタートアップの課題だ。

 

 OSPはスタートアップに寄り添った細やかな支援が特徴で、これまでの採択は県内外と台湾から24社。そのうち7社の出資、11社の融資につなげ、資金調達を支えた。ビジネスマッチングの実績は45件に上る。起業に必要な財務や税務、労務、マーケティングなどの勉強会のほか、専門家のアドバイスもあり、実務面も手厚い。

 毎年2月には、事業計画を発表するDemoDay(デモデー)を開く。大手企業の役員や新規事業担当者、ベンチャーキャピタルらが詰め掛け、採択企業のプレゼンテーションに聞き入る。出資や融資、事業提携につながる事例もあり、採択企業は真剣勝負で臨む。問い合わせは琉銀法人事業部、電話098(860)3454。応募は専用サイトから。

 

環境整備 支援する側の見方>

株式上場の成功例に期待

大西克典さん
県産業振興公社 ハンズオンマネージャー

 革新的な技術や発想で、新しいビジネスモデルを模索するスタートアップ。創業当初は、資金や経営ノウハウが乏しく、成長を支える環境整備が重要という。県産業振興公社でベンチャー企業スタートアップ支援事業を手掛ける大西克典ハンズオンマネージャーに支援の在り方などについて聞いた。

「沖縄から株式上場するスタートアップが出てほしい」と期待する大西克典氏=那覇市の県産業振興公社

 -スタートアップ支援が全国的にも活況だ。

 「変化の激しい時代で、新たな商品やサービスをどんどん展開する必要があるが、大手企業は新規事業をつくるのに時間がかかる。スタートアップの新しいアイデアや技術を取り込むことで、スピード感が出せる」

 「県内でも行政や金融機関、教育機関、県産業振興公社などもサポートを手掛け、環境が整いつつある。支援プログラムに参加するスタートアップも増え、盛り上がりを見せている。ただ、実績がまだない」

 -何を実績とするのか。

 「大手企業との協業や資本連携などもあるが、最も分かりやすいのが株式上場だ。今まで誰もやったことがない事業を始めるのがスタートアップ。金融機関は融資の判断がしづらい一方、創業から大規模な投資が必要なスタートアップは売り上げがない事業開始当初からの借入金返済は難しい。ベンチャーキャピタルからの出資がスタートアップの成長に向いている」

 「ベンチャーキャピタルは、出資のリターンで成り立っている。株式上場は利益が大きく、投資のリスクにも見合っている。1社でも上場の成功例が生まれれば沖縄に注目が集まり、スタートアップの支援体制がさらに充実していくだろう」

 -沖縄でスタートアップに期待することは。

 「良い面も多い沖縄だが、交通渋滞や貧困などの社会課題も多い。社会課題の解決が、インパクトの大きい事業に育つ可能性が高いため、裏を返せば沖縄にはポテンシャルがある。スタートアップは若手が担う印象が強いが、中堅もシニア世代でもチャンスはある。沖縄から生まれたスタートアップは、距離の近い東南アジア市場も狙えるはずだ。沖縄での挑戦がもっと増えてもいいと思う」

資金や助言 新ビジネス成長

【EC-GAIN】ネット通販サイト「temite(テミテ)」

課題明確 スピードアップ

 「デモデーで事業計画を披露したことで、覚悟が決まった」。EC-GAIN(イーシーゲイン)の村田薫代表はオキナワ・スタートアップ・プログラム(OSP)に採択された効果を説明する。プログラム最終日の発表会「DemoDay(デモデー)」は、企業や投資家から協力を得られるかどうかの大一番。事業に真剣に向き合うきっかけになり「特にスピード感がついた」とする。

テミテのファンを増やしたい」と語る村田薫代表(前列左から2人目)とEC-GAINのメンバー=北中城村・ハウリヴライカム店

 同社は、SNSでの口コミを活用したインターネット通販サイト「temite(テミテ)」を開発。今年9月に本格運用した。

 誰もやったことがない事業で正解が分からない中で、成功を目指すプレッシャーは大きい。だが、世の中に先駆けて新しいサービスを生み出している実感があり、プレッシャーを上回る楽しさがあるという。

 「ついつい楽しい仕事ばかりに流れがちになるが、勉強会やアドバイスなどでシビアな指摘を受け、本当にやるべきことが明確になった」と強調する。

 今では、顧客のために分かりやすく、使いやすいサービスづくりを優先するとの考えが浸透し、「ぶれが少なくなり、事業展開のスピードが上がった」という。

 テミテの利用企業は累計400社となり、口コミ会員は1200人まで増えた。将来的には海外展開も見据える。村田代表は「テミテのファンを世界中に増やしたい」と意気込む。

【びねつ】成果報酬型求人サイト「ジョブカロリ」  

営業の効率 飛躍的に向上

 成果報酬型求人サイト「ジョブカロリ」を開発・運営するびねつは2016年、オキナワ・スタートアップ・プログラムの前身に当たる「りゅうぎんスタートアッププログラム」に採択された。高嶺克也代表は採択を機に、出資による資金繰り改善、営業活動の効率化につながったとし「向かい風が、追い風に変わった」と振り返る。

5年以内の上場を目指すびねつの高嶺克也代表=那覇市・ハウリヴ久茂地店

 同社を設立したのは15年。求人の採用が決まった場合だけ広告費が発生し、サイト掲載料や原稿制作料が無料の成果報酬型サービスは県内になく、新たなビジネスになると捉えた。

 ただ、これまでにないサービスは理解されにくく、なかなか契約が取れない。電話や飛び込みなどの営業活動は企業約3千社、ベンチャーキャピタル約100社に上ったが、ほとんど門前払い。

 行き詰まりを感じていた頃に知人の紹介で、同プログラムに応募した。採択されたことで環境が一変する。琉球銀行を通して県内大手企業の担当者にも会えるようになり「営業活動の効率が飛躍的に向上した」。

 創業当初は売り上げがない中、システム開発投資と営業活動に費用がかかり、資金繰りに苦しむのがスタートアップの特徴。同社も資金集めにもがいていたが、17年8月に琉銀と沖縄タイムス社など3社から3千万円の出資を受けたことで悩みから解放され、事業に勢いがついたという。

 ジョブカロリは県内3千店舗で利用され、鹿児島や宮崎でも導入が相次ぐ。「苦しいことばかりだが、自分が見たい世界の実現に近づいている。株式上場目指して、もっと頑張りたい」と話した。

 

オキナワ・スタートアップ・プログラム2019-2020へのエントリーはこちらから。http://okinawa-startup.com/